第二部手塚治虫とアニメ
2−2海外を席巻するアニメパワー
日本アニメがフランス文化を侵略!
フランスで火の手が上がった日本製アニメに対する風圧は強かった。アメリカでもそうであったが日本製アニメに対する常套句「内容が暴力的、性的で子どもに悪影響を及ぼす」という声が高まり、1983年には当時ミッテラン政権で文化大臣を務めたジャック・ラングが遂に「日本アニメは文化侵略である」と公式に遺憾の意を示した。
しかし、当然のことであるが子どもにとってそんなことは何の意味も持たない。日本製アニメの人気は一向に衰えず、1987年にはTF1の子ども番組「CLUB DOROTHEE」の枠内で放映された『聖闘士星矢』と『ドラゴンボール』が67%という驚異的な視聴率を記録する。
すると、フランス政府はとうとう「青少年向け視聴覚規正法」という法律をつくり、自国のアニメ産業保護のため海外製作番組の放映比率を規制してしまった。これは明らかに日本のアニメ排除が狙いである。
フランス政府は戦前からハリウッド映画を「文化侵略」と見なして保護政策を取った経緯がある。今回は日本のアニメから自国のアニメ文化・産業を守るための保護策として行ったのであるが、裏を返せば日本のアニメがハリウッド映画と同等の脅威となっていたということなのであろう。
さらに、1991年に、のちに雇用・連帯省付家族・児童担当大臣に就任する社会党議員セゴーレーヌ・ロワイヤル女子が日本のアニメを批判する本を出版して追い打ちをかけたこともあり、日本のアニメは次第に先細りとなり1990年代中盤以降はほとんど放映されなくなり冬の時代を迎えるのである。
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