アニメビジネスがわかる

ケータイアニメ最新事情３２

遂にケータイで「ＬＯＳＴ」が見られる時代に

宣伝かたがたのお知らせであるがケータイであの「LOST」が見られるようになった。ケータイサイトＱＴＶビデオでは本日から。ＱＴＶ（無料サイト）では金曜日から見られる。

ＮＴＴドコモが906シリーズの発売をきっかけに動画視聴キャンペーンに本腰を入れはじめた。先週27日にその記者発表があったのだが、今週から爆笑問題を起用した宣伝が目に付きはじめた。まだ量的には少ないが今後かなりのプロモーションが展開される予定と聞いている。

ＱＴＶでの「LOST」配信は意図したわけではないがたまたまその時期にと重なった。ハリウッド製作のテレビドラマがケータイでも気軽に見られるようになった意義は大きい。

現在長尺の動画を見られるのはＮＴＴドコモだけである。他のキャリアは動画ジャンルに参入したいものの諸事情があってなかなか踏み切れないのが実情である。ここのところ新規顧客が減り続けていたドコモであるが、この動画キャンペーンがそのリカバリー策となるであろうか。ここ２〜３ヶ月ドコモの動きに注目したい。

ケータイアニメ最新事情３１

ケータイアニメ配信最新動向⑪〜今後の動向

iモードメニュー〈アニメ／特撮〉ジャンルにある25のサイトについてかいつまんで紹介してきた。これらのサイトの市場は現時点で年商20億円〜30億円ベースであると推定される。しかし、毎月かなりの成長率を示しているので、１年も経てば倍増、３倍増というケースも十分考えられる。

また、他の動画ジャンルの市場も合わせて考えると既に年商50億は超えるベースになっていると推測される。こちらも１年後には２〜３倍の成長を示しているものと思われる。

視聴者の数も急増している。端末がバージョンアップされるごとに視聴機能がアップし動画への関心が高まりつつある。ドコモでも他のキャリアにできない機能として今後動画視聴を大きくＰＲして行く予定であるらしい。

では、他のキャリアは黙ってこのドコモの独占を許したままでなのだろうか？聞くところによると近々ひとつのキャリアが長時間動画配信に乗り出しそうだということである。ケータイの場合、展開のスピードが早いので何時とは言えないがどんなに遅くても来年ということはないであろう。そうなればケータイ保有者の70％近くが動画視聴可能な環境に置かれる。

とはいえ、まだまだ課題も大きい。映像や音質のクオリティは万全とは言い難いし操作環境も改善の余地は大きい。ケータイで見るんだからそんなものという考え方もあるだろうが、見づらい聞きづらいという声も実際にあるのは確かだ。日進月歩のケータイ進化の状況を考えればそれらの問題をクリアーする日は近いと思うが、そうなればおそらくパソコンと同様、あるいはそれ以上の動画市場が開ける可能性が生まれるであろう。

ケータイアニメ最新事情３０

ケータイアニメ配信最新動向⑩〜９位から25位までのアニメサイト

iモードメニュー〈アニメ／特撮〉ジャンル９位以下については順番がついていないが並んでいる順に便宜上順位をつけて紹介して行きたい。

10位は「ドコでもアニメ」である。これはムーバイルという東北新社／ＭＴＩがつくった会社が運営しているサイトで、そのため東北新社が製作したパトレーバーなどのアニメを見ることができる。

11位は「ディズニームービー」。ディズニーチャンネルとは違ったディズニーのサイトでドナルドダックやプーさんなどの長編アニメも見られるサイトである。

12位は「フルアニメMAX」。ここはスーパービジョンというADKの子会社が運営している。そのためADK、NAS製作のアニメが多い。

13位から16位までは東映アニメーションのサイトが続く。
「鬼太郎☆ANIMO」
「神坂家族☆ANIMO」
「999＆ハーロック☆ANIMO」
「東映☆ANIMOまつり」

17位は唯一の特撮サイト「動画ウルトラヒーローズ」である。ここはビクターネットワークスが運営している。

18位はニコロオデオンが運営する「スポンジボブ＠」は単独コンテンツサイトである。

19位は「ベストヒットアニメ動画」。ＩＴ系企業セプティーニの子会社アクセルマークが運営している。

20位は東映アニメーションの「どれみ☆ANIMO」。

21位は「テレビ東京あにてれ」。文字通りテレビ東京のアニメサイトである。後発のためか順位は低くなっている。

22位は先月オープンしたタツノコの「タツノコプロOFFICIAL」である。

23位は東映アニメーションの「一休さん☆ANIMO」。

24位はこれも先月オープンしたトムスが運営する「特選chアニ見る」である。

そして25位は「クレイアニメ☆KUROMAME」というサイトである。これは札幌にある会社が運営していて、昨年東京国際アニメフェアのコンテストにも応募したクレイアニメ「KUROMAME」をテーマとしたサイトである。

ケータイアニメ最新事情２９

ケータイアニメ配信最新動向⑨〜ディズニーから蛙男へ

ＱＴＶビデオに次ぐiモードメニュー〈アニメ／特撮〉ジャンルの４位は「ディズニーチャンネル」である。これに関しては説明の必要はないと思われるが、ディズニーが運営するディズニーチャンネルと連動したサイトである。月額315円でディズニーチャンネル放映のアニメが見られるという趣向でデコメがあったりとディズニーキャラクター満載のサイトとなっている。

５位は東映アニメーションの「スラムダンク☆ANIMO」である。これもドラゴンボール同様単独コンテンツによるサイトである。ドラゴンボールほどではないがやはり強い。

そして６位以下のランキングは次の通りである。

6位ＭＴＶ FULLうた（ＭＴＶ）
7位アニメフル（ＮＴＴレゾナント）
8位デジモン☆ANIMO（東映アニメ）
9位蛙男商会（DLE）

６位の「ＭＴＶ FULLうた」は文字通りＭＴＶのサイトである。ここは元々着うたサイトであったが、このジャンルに移動してからはＭＴＶで放映しているビデオクリップやアニメ＆実写コンテンツなども配信するサイトとなった。ニケルオデオン（ＮＨＫでもやってるが）のスポンジボブなどをも見られる

７位の「アニメフル」はＮＴＴレゾナントが運営するサイトである。ここも多くのコンテンツを集めた総合サイトでバランスの取れた編成となっているが、これといった特徴の見られない。

８位の「デジモン☆ANIMO」は東映アニメーションのサイトである。

９位が何と「蛙男商会モバイル」である。単独コンテンツではないが、25もあるサイトでこの位置にいるというのは大変健闘していると言えるであろう。鳥取から麹町に引っ越した勢いを示すようなランキングである

ケータイアニメ最新事情２８

ケータイアニメ配信最新動向⑧〜ＱＴＶを中心とした今後の事業

ＱＴＶビデオで見逃せないのはＱＴＶ（旧Qlick.TV）との連動である。ＱＴＶはフロントメディアが運営する無料動画サイト。ＱＴＶで無料視聴、もっと見たければＱＴＶビデオでアーカイブを見る。ＱＴＶは広告収入型サイトなので無料配信が可能なのだが、当然視聴者はＱＴＶビデオより遙かに多い。現在ＱＴＶビデオの会員は３万人だが、ＱＴＶはその３倍以上の100万人以上いる。

この関係はちょうど地上波の総合放送とＣＳの専門チャンネルといったところであろうか。アニメ関連であるならテレビ東京とAT-X？の関係に似ているかも知れない。ケータイでやっている限り新しい価値が付加されているのは確かであろうが基本的な関係はＱＴＶで無料配信をやり、ＱＴＶビデオで有料アーカイブを見せるというモデルである。

一度でもいいからＱＴＶで無料で視聴させた場合の方がＱＴＶビデオでの売上も高くなる。これは実体験として言えることであり、このあたりのビジネスモデルが他のサイトと大きく異なるところであろう。

さらに、「アドネットワーク」と呼ばれる他サイトとの連携も見逃せない。そのひとつがモバゲータウンとの連携で、400万会員のサイトでＱＴＶビデオの作品が見られるシステムになっている。このシステムについてはいずれ詳しく述べることとしたい。

ケータイアニメ最新事情２７

ケータイアニメ配信最新動向⑦〜ＱＴＶビデオ（まるごとアニメ）

〈アニメ／特撮〉ジャンルの３位にランクされているのがＱＴＶビデオである。運営しているのはフロントメディア。上位サイトの中では唯一の独立系企業である。１位のドラゴンボール☆ANIMOや２位のアニメ・モビはどちらかというとコンテンツ系企業（東映は製作、バンダイは流通が主だが）が運営しているが、ＱＴＶビデオのフロントメディアはＩＴ系と言えるであろう。代表以下モバイル系やＩＴ系企業でのキャリアを持つ人間が多い。

その中でコンテンツ系出身なのは私とコンテンツ調達担当の某ハードメーカー系ビデオメーカーに勤務していたＯ氏くらいなものである。私はどちらかというとアニメ専門であるがＯ氏は守備範囲が広く、実写ものから海外作品まで幅広く調達できる能力の持ち主である。そのため、アニメジャンルにありながら『冬のソナタ』（さすが冬ソナ、結構アクセスがあります）や海外ドラマ（某メジャー海外ドラマが６月からはじまる予定）を配信している。

このように、このサイトの魅力は何といってもタイトル数・話数の豊富さにある。というのも、フロントメディアは特定コンテンツ企業との資本関係などがないので、しがらみにとらわれず自由に作品を調達できるからである。そのことのデメリットもあるが、大量消費型と思われるケータイサイトでのコンテンツ配信にとって、全方位で作品を調達できるサイトのアドバンテージは高いはずである。

現在ＱＴＶビデオでは4,000話余りのアニメを配信しているが、『冬のソナタ』のような実写もあるということで「まるごとアニメ」から「ＱＴＶビデオ」へと名称変更となった訳であるが、このまま行くとおそらく断トツの作品量を揃えたサイトになるであろう。

ケータイアニメ最新事２６

ケータイアニメ配信最新動向⑥〜バンダイネットワークのアニメ・モビ

「ドラゴンボール☆ANIMO」だけで２回も費やしてしまったが先を急ぎたいと思う。

〈アニメ／特撮〉ジャンルにおけるランキング２位はアニメ・モビである。１位のドラゴンボールが単独コンテンツサイトなので総合アニメサイトとしてはトップということになる。

このアニメモビ、バンダイ系列のバンダイ・ネットワークスが運営するサイトである。そのためか、ここにはサンライズ作品やバンダイビジュアル出資作品が豊富に揃っている。もちろん、その他のアニメも充実しているがユーザーに取っての魅力はガンダム以下のサンライズ作品やバンダイビジュアル系作品を見られるところにあるのは間違いないであろう。

アニメ・モビが総合サイトとしてトップを維持できているのは、同じバンダイグループのコンテンツ・アグリゲーターのバンダイチャンネルに拠るところが大きいようである。バンダイグループ系列の作品を含めバンダイチャンネルは強力なコンテンツ調達能力を持っており、ケータイに関しては今までアニメ・モビ中心であったがここに来て変化の兆しが見えはじめた。

それはバンダイグループ系作品をアニメ・モビ以外のサイトにも配信しようという動きである。実際、サンライズの中核作品であるコードギアス（ファースト・シリーズ）が３月末からいろいろなケータイサイトで見られるようになった。そしてＧＷの最中に第二シリーズであるＲ２の配信もスタートしている。

おそらくバンダイチャンネルのこの傾向は徐々に強まると思われ、最終的にはＰＣで既に行われているようにほとんどのサンライズ・バンダイ系作品が他サイトでも配信されるようになると思われる。そうなればこのサイトの独自色が薄れていく可能性があり、今後どのような商品政策を取るかが注目されるところである。

ケータイアニメ最新事情２５

ケータイアニメ配信最新動向⑤〜東映アニメのケータイ戦略

東映アニメーションが配信事業に力を入れたのは将来の売上の柱にしようという目論見があったからだと思われる。おそらく、それは東映アニメーションのみならずどこの企業でも考えていることであろうが、東映にはそれを自社運営できるコンテンツ力も資金力もあった。

東映の場合、昨年の段階で2008年３月期連結決算売上が189億で前期マイナス６％、金額にして12億円近く下がる予測となっていたことも配信事業の大きな推進力であった思われる。要するに危機感である。しかし、近々発表された最終決算予測では売上211億と上方修正され最高売上を記録した前々年度215億に次ぐ数字になりそうである。

その要因としては、国内ではTVシリーズ「Yes!プリキュア5 GoGo!」、海外ではヨーロッパ向けの「ドラゴンボール」シリーズを中心にセールスが好調に推移したこと、また、「Yes!プリキュア5」の自社開発商品を主とした商品販売事業が順調に伸びたことが指摘されている。そのため、純利以外の売上高・営業利益・経常利益については増収増益となる見込である。

上場以来順調に売上を伸ばしてきた東映アニメーションであるが、一昨年を頂点に昨年、今年と売上が低落傾向に入る気配を見せた。それが配信事業強化の後押しをしたのであろうが、この上方修正が不退転の覚悟に見えた配信事業の自社運営にどのような影響を与えるのか。

東映アニメが持つ九つのサイト中、「ドラゴンボール☆ANIMO」や「スラムダンク☆ANIMO」のように上位にランキングされているサイトの採算性は良いであろうが全体を通じて果たしてどうか。単独作品のサイトは新しいシリーズでもつくらない話数に限りがある。消費型のケータイサイトユーザーは常に新しいコンテンツを求める。

今後もまだまだ新しいサイトがつくられるであろうが、ドラゴンボールを上回るパワーを持つ作品はなかなか見当たらない。その意味で東映アニメーションが今後どのようなケータイ施策を取るのか、「ドラゴンボール☆ANIMO」がどこまで首位を維持できるかその動向が大いに注目されるところである。

ケータイアニメ最新事情２４

ケータイアニメ配信最新動向④〜アクセスランク１位〜５位

それでは〈アニメ／特撮〉ジャンルにおけるランキング上位の５社である。

〈iモードアニメジャンルランキング表（アクセス数）〉

1位ドラゴンボール☆ANIMO（東映アニメ）
2位アニメ・モビ（バンダイ・ネットワークス）
3位ＱＴＶビデオ（フロントメディア）
4位ディズニーチャンネル（ディズニー）
5位スラムダンク☆ANIMO（東映アニメ）

以上であるが、上位５サイトは最近固定化されつつあるように見える。
さて、１位は東映アニメーションが事業主体の「ドラゴンボール☆ANIMO」である。他のサイトはタイトル数や話数の多さを競っているのに対し、「ドラゴンボール☆ANIMO」ではドラゴンボールしか扱っていない。これはドラゴンボールしか貸し出さないレンタル店と同じである。独占的に取り扱っているが故に成せる技であろうが改めてドラゴンボールの作品力に驚かざるを得ない。

東映アニメーションはネット関連の事業売上を今後ひとつの事業の柱にしようと非常に大きな力を注いでいる。中でもケータイに関しては、九つものサイトをオープンしているのを見てもわかるように多大な投資を行っている様子が伺える。宣伝・プロモーションもかなりの規模で行っているようで、「ドラゴンボール☆ANIMO」もその成果と思われるが、ランキングの順位を追って行くとわかるように作品によってかなりバラツキが出ている。

「ドラゴンボール☆ANIMO」のような単体作品サイトの場合、その作品力のパワーが結果に如実に結びつく。多数の作品を取り扱っていうサイトであれば、売上が落ち込んでも人気のあるタイトルを導入すれば回復できる。しかし、単体作品のサイトだとその作品自体にパワーがなければ上昇は極めて困難である。（この項続く）

ケータイアニメ最新事情２３

ケータイアニメ配信最新動向③〜動画ジャンルの1/4はアニメサイト

現在動画ジャンル〈アニメ／特撮〉部門でアニメを中心に配信しているサイトは25で全動画ジャンルの1/4がアニメということになる（ただし、〈アニメ／特撮〉部門のうちひとつはウルトラマンなどの特撮もの配信サイトである）。

しかし、アニメを配信しているのはここだけではない。〈総合／バラエティ〉にある「Qlick.TV」や「ムービーフル」、〈音楽〉のジャンルでモバイルGyaoなどでもアニメを配信しているが、ここではアニメに特化している〈アニメ／特撮〉ジャンルの中のランキングや参加プレーヤーなどについて解説しながら最新動向について追ってみたい。

この〈アニメ／特撮〉ジャンルにあるサイトは全て課金型である。月額210円〜525円の会費制（会費金額に相当する作品数が見られるシステムが多い）となっており、それ以上の視聴に関しては個別課金（１話105円〜210円）とするようになっている。要するにビデオレンタルとほぼ同じシステムであると思って貰ってよい。

ここであらかじめ解説しておくと配信サイトには二つのビジネスモデルが存在する。ひとつは課金タイプ、もうひとつは無料広告タイプである。課金タイプのサイトは文字通り有料コンテンツを販売して収入を得得ている。一方、広告収入タイプはバナー広告や動画広告によって収入を得るというものである。そのため〈総合／バラエティ〉のＱＴＶやムービーフル、またモバイルGyaoなどのサイトでは無料でコンテンツが見られる。

さて〈アニメ／特撮〉であるが、実際のiモードメニューを見て貰うとランク順で並んでいる。この順番は課金の高低ではなく、ある期間のアクセス数によって決められている。したがってランキングと各サイトの売上は必ずしも一致していないと言えるが、経験的にほぼ連動してる言っても構わないであろう。

それではランキング順に各サイトを見ていきたい。

ケータイアニメ最新事情２２

ケータイアニメ配信最新動向〜２年間で100以上になった動画サイト

現在ドコモのｉメニューある［動画／ビデオクリップ］カテゴリーには下記のように５ジャンル102サイトがある。

〈音楽〉
「レコ直♪ビデオクリップ」やレコード会社直営のサイトがビデオクリップ中心に配信している。現在23サイト。

〈芸能／グラビア〉
芸能、グラビア系動画のサイト。現在30サイト。

〈お笑い〉
最近誕生したジャンル。「動画よしもと」など現在5サイト。

〈アニメ／特撮〉
アニメ中心のサイトで現在25サイト。

〈総合／バラエティ〉
テレビ放送に近いコンテンツを配信しているサイトが中心。ＱＴＶ（Qlick.TV）など無料サイトも多い。現在19サイト。

２年間で100サイト以上になった訳であるから、毎月平均４サイト以上が誕生していることになるが、実際は昨年末から急撃に増えており、ここ一ヶ月で10もの新しいサイトが生まれた。最初からウォッチングしている人間としてはよくまあこんなにという感じがするが、市場としてはまだまだ小さいので今後も新規参入は続くであろう。

実はこの他に最近〈動画共有〉のジャンルが最近誕生しており、コミュニティ／ＳＮＳ部門にはmixiモバイル他24のサイト、動画共有部門にはニコニコ動画他２つのサイトがあり人気を呼んでいるようだ。しかしながら、ニコニコ動画などでは無許可のアニメ映像が大量にアップされており、現在日本動画協会をはじめ幾つかの団体、企業がそれに関してニコニコ動画、あるいはＮＴＴドコモに問い合わせている状況である。この辺の動きについては後日お伝えしたいと思っている。

ケータイアニメ最新事情２１

ケータイアニメ配信最新動向①〜〜本格化したケータイでのアニメ配信

久々にケータイアニメの動向をお伝えしたいと思う。アニメ配信のケータイサイトに最初から関わっている身として感じるのは、昨年がケータイ動画元年であり今年は飛躍の年ということである。おそらく年初と比べ年末は数倍、あるいは10倍の市場規模になると思われる。

その原因として一番に挙げられるのが動画配信に対する認知の高まりであろう。思えば日本初（世界初）の動画配信サービス「まるごとアニメ」（現ＱＴＶビデオ）が立ち上がった２年前には見られる機種も少ないこともあり認知度はほぼゼロであった。

その後。機種のバージョンアップの度に動画に接する人間が増え続けた。そして、各サイトのプロモーションやドコモの告知・宣伝（フル動画配信はドコモの機種でしか見られない）と相まってスタートから１年を経たあたりから急速に認知が進んだと実感した。

２年前のスタート時期に動画のフル配信のサービスを行っていたのは「まるごとアニメ」と「ムービーフル」だけであった。それからディズニーチャンネルやバンダイネットワークスのアニメモビなどが立ち上がり、多くなったなと思ったら、昨年の３月からｉモードのメニューに［動画／ビデオクリップ］という新しいカテゴリーが生まれた。それから怒濤の如く動画サイトが誕生したのであるが、これからその動向をわかりやすく伝えたいと思う。

ケータイアニメ最新事情20

「ケータイマクロス」快調

『ベオウルフ』についてまとめて書こうと思ったが、ケータイでマクロスを見られるというお知らせを先にする。

現在Qlick.TVとまるごとアニメで配信中の『超時空要塞マクロス』の視聴がうなぎのぼりである。1話〜5話まで無料ということもあるが、それ以降の話数も有料だがかなり見られている。

Qlick.TVは12月4日からモバゲータウンと提携し、番組表をモバゲー内のトップページ掲載することになった。その効果もあるかも知れないが7月に行ったエヴァンゲリオン1〜5話無料視聴キャンペーン以来の反応である。

Qlick.TVやまるごとアニメでは、今週末から話題作を大量に配信する。『鋼鉄神ジーグ』『ヒロイック・エイジ』『精霊の守り人』『超時空要塞マクロス　愛・おぼえてますか』、それに『.hack//SIGN』『.hack//Liminality』『.hack//黄昏の腕輪伝説』『.hack//Roots』などである（まるごとアニメでは全部配信するがQlick.TVでは一部見られない作品もあるのでご了解の程を）。

さらに来週から『サクラ大戦　エコール・ド・巴里』など一連の〈サクラ〉ものがはじまる。他にも『ラーゼフォン』『サムライチャンプルー』『あずまんが大王』『ガンパレード・オーケストラ』『少女革命ウテナ』などの話題作が同時に配信される。まさにクリスマスとお正月が一緒にやってきた感じである。

実はまるごとアニメでは実写映像の配信も結構やっている。ホラーものやグラビア・アイドルものだが、12月からはなんとあの『冬のソナタ』を配信している。今後は実写のタイトル数が増えて行く予定なので、こちらも楽しみにして欲しい。

それと来年１月からｔｖｋやＢＳ１１でオン・エアーが開始される『シゴフミ』のケータイ試写会が12/26日Qlick.TVで行われる。『ＴＴ２』からほぼ１年、佐藤竜雄監督作品である。応募方法はQlick.TVにあるので見て頂きたい。

〈Qlick.TV〉はiモードメニュー→「動画／音楽クリップ」→「総合／バラエティ」→Qlick.TV
〈まるごとアニメ〉はiモードメニュー→「動画／音楽クリップ」→「アニメ／特撮」→まるごとアニメ

ケータイアニメ最新事情19

『エヴァンゲリオン新劇場版：序』で見せたQlick.TVの役割

前回『エヴァンゲリオン新劇場版：序』では女性層、若年層などの新しい観客を惹きつけたと述べたが、公開に先立ち7/20からQlick.TVで行ったエヴァンゲリオンの無料配信は、それらの層に対し一定の影響力を持ち得たのではないと思われるので、それについて書いてみたい。

Qlick.TVの視聴層は10代が40％、20代が35％、30代が16％と圧倒的に若い層が多い。また女性層も40％以上存在する。アンケートを取ったわけではないが、1995年の放映時のファン層を考えると、Qlick.TV視聴者の中でリアルタイムでエヴァンゲリオンを見ていた人はさほど多くないであろう。

Qlick.TVでは7/20からエヴァンゲリオンの１話〜５話を無料で配信した。9/1公開の『エヴァンゲリオン新劇場版：序』のプレ・キャンペーンでもあったが、予想はしていたもののその反応は凄まじかった。

Qlick.TVの配信開始からから公開前日の8/31までのアクセスは数十万に及び、10/19の終了日までには実に合計100万回以上の視聴があった。同時にまるごとアニメで配信していた６話以降の有料課金へのアクセスも一挙に跳ね上がった。

『エヴァンゲリオン新劇場版：序』に対しQlick.TVがどこまで貢献できたかはわからないが、この数字を見る限りエヴァを知りたいという若い世代のニーズに十分応えられたのは間違いないと考えている。配信開始からわずか１年半足らずでケータイで映像を見る時代が確実に訪れているようだ。

ケータイのアピール力については、最近発売されたばかりの『勝手サイト』（石野純也／ソフトバンク新書）にも書かれているので是非一読して欲しい。フロントメディア代表市川茂浩の著書『誰も知らなかったケータイ世代』（東洋経済新報社）も併せて読むとケータイ世代の概要がほぼつかめる。

ケータイアニメ最新事情18

ネットとケータイで見られる「パグニュース」

現在Qlick.TVで配信している「パグニュース」の評判がいい。これは国内外の「ゆるーい」注目ニュースをテーマに２匹の「パグ」キャラクターが軽い笑いと風刺を込めて紹介するショート・フラッシュ・アニメである。

例えば昨日のニュースは「レゴにそっくりなケーキ」であり、そのケーキづくりにパグが挑戦するという者である。趣味に任せたトリビアなニュースを取り上げるので、「ＮＹで犬の仮装パレード」「魚も不眠症になる」「楽天食堂は無料」「牛糞からバニラの香り」といった新聞の一面には決して載らないようなテーマが多い。

パグニュースは土日を除く毎日更新である。Qlick.TVの他、ＰＣでのアニメーション・シアター「a-i-r（エア）」や、時々パソコンテレビGyaoでも配信されているので是非一度見て欲しい。

■ＰＣ：アニメーション・シアター「a-i-r（エア）」パグニュース
http://www.a-i-r.jp/pugnews/

■ケータイ：Qlick.TV
iモードメニュー→「動画／音楽クリップ」→「「総合／バラエティ」→Qlick.TV

ケータイアニメ最新事情17

ケータイアニメ配信の特徴と利点
１） プライベートメディアである
ケータイそのものの大きな利点にプライベート、つまり自分だけのものということがある。自分だけのテレビやＰＣを持っている人間というのは意外と少ない。その点ケータイは自分だけのものである。誰にも気兼ねせずに見られるということは非常にポイントが高い。

２） ユビキタスである
ケータイ動画は時間、空間を問わない。何時でも何処でも見られる。そして常時オンになっていているのでその都度スイッチを入れる必要がない。まさにユビキタスである。レンタル様に返却し損ねて滞納という心配もない。

３） クレジットカードが不要、料金支払いが楽。
ＰＣなどの動画配信では決済にクレジットカードが必要になるがケータイの場合は電話料金と一緒に支払いができる。新たにカードをつくる必要もない.。

４） 権利の管理（ＤＲＭ）がしっかりしている
これはコンテンツを提供する側にとってのメリットであるが著作権の管理がしっかりしている。現在ストリーミング形式が主流の動画配信であるが、それがダウンロード型であってもコピーなどの心配はない。それは着うたで実証済みである。この方面に関して日本のケータイはおそらく世界一であろう。

こうして書くとメリットばかりのようであるがもちろんデメリットもある。そのままケータイの弱点であるが、画面のサイズ、バッテリーの問題などである。画質は良くなって行くが画面サイズばかりは致し方ない。これはそういうものだと思うしかないであろうし、逆のこれによって他のメディアの特性も明らかになる。大画面で見たいというニーズはなくならないであろうからメディアとしての棲み分けも明確だ。またバッテリーに関しては次第に容量が大きくなりつつあるということ、また自宅で視聴するケースが多いのでそれほど心配することはないと思われる。

ケータイアニメ最新事情1６

パッケージと配信の関係

音楽業界でよく言われるのはＰ２Ｐソフトによる違法配信等によってパッケージ（ＣＤ）の売上が減少しているということである。そのため海外ではレコード業界団体によるユーザーへの訴訟がしばしば起こり、日本でも2005年にレコード会社5社が悪質と思われる不正ファイル公開者5人に対し著作権侵害を指摘、平均48万円の損害賠償金で和解した。

しかし音楽パッケージ減少の原因は違法ファイル交換ではないという意見もある。ジャーナリストの鳥賀陽弘道氏はその著書『Ｊポップとは何か〜巨大化する音楽産業〜』でその原因をテレビＣＦやドラマタイアップに音楽プロモーションを頼りすぎたせいであると指摘、流行に敏感な層はすでに1990年代末からネットによる情報収集に移行しているにもかかわらず、レコード業界が方向転換をはかれなかったため今日の低迷を招いていると述べている。

一方アニメの場合はどうか。映像も音楽に負けず劣らずネット上でファイル交換がなされており特にアニメは盛んである。しかし現状アニメのパッケージ市場（ＤＶＤ）では音楽史上のような極端な落ち込みは見られない。またアニメの配信市場の規模も小さく、シングルＣＤ市場が着うたに取って代わられているような現象も見られない。

音楽の場合急伸する配信市場がまだパッケージ減を埋めるに至ってない。アニメでも長期的に見るとパッケージは減少傾向をたどると思われるが、総体としての売上を減らさずバランスよく配信市場に移行するためにはＰＣやケータイなどを新たなプロモーション・ウィンドウとして機能できるようになるかがカギになってくるであろう。YouTubeは大きなプロモーション・ウィンドウとなりつつある。これがビジネスに結びつくことが証明されれば一気にそのスピードが加速されるであろう。

ケータイアニメ最新事情1５

勢いを増す音楽配信〜アニメ配信の将来は？

今週日本レコード協会から2007年1月〜6月までの有料音楽配信の売上実績が発表された。これによるとＰＣとケータイ向け有料音楽配信の総額は351億9300万円と前年比42％増となっている。
http://www.riaj.or.jp/

日本の音楽配信で特徴的なのは9割がケータイ向けと圧倒的に強いことである。海外ではiPodに代表されるようにＰＣを通じての配信が主流だが、iフォンが爆発的に売れているので今後ケータイの比率は高まる可能性が強い

急速な成長を見せている音楽配信であるが、それでもパッケージ（ＣＤ）市場の落ち込みをカバーするには至ってない。配信ダウンロード数（2億2590回）はすでにシングルＣＤ（3082万枚）を大きく凌駕しているにもかかわらず金額をカバーできないのはパッケージ1,000円前後、着うた（フル）300円に代表される料金の差によるものであろう。

さて翻ってアニメ配信はどのようになっているだろう。この分野のアグリゲーターとして圧倒的なシェアを誇るバンダイチャンネルが2006年に提供した有料アニメ番組は1,600話である（バンダイナムコ決算資料）。2004年に500万部、2005年には1,000万話であったから非常な勢いで伸びていることがわかる。

現在この数字のほとんどがＰＣへの提供によるものであるが、ここに今年から来年にかけて市場形成されると思われるケータイによる配信が加わってくるものと思われる。

昨年から開始されたケータイアニメ配信は今年に入ってから本格化しており現在急激に配信サイトが増加している。一番最初に配信をはじめたフロントメディアをはじめとして、ISAO、ディズニー、バンダイネットワークス、ＭＴＶ、ＮＴＴレゾナンス、東北新社、Ｇｙａｏ、東映アニメーション、角川書店、アクセルマーク、ニフティ／三井物産といったＩＴ系からコンテンツ・ホルダー系まで多彩な企業が参入している。

音楽配信ではケータイが圧倒的に強いがアニメに関しては全く逆である。配信開始が遅かったという理由もあるが果たして今後どうなるのか。あんな小さな画面じゃ誰も見ないと思われていたが、現状ではかなりの勢いで視聴者を増やしており、アニメ配信事業を実際やっているものとしては確かな手応えを観じているところである。

ケータイアニメ最新事情1４

ケータイアニメな人々５〜ケータイは女性を無視できない

ＰＣより先にケータイから情報の世界に入った比較的若い世代は家でパソコンを持っていない、あるいは共有というケースが多い。フロントメディアが行ったアンケートによると部屋にテレビもＰＣもないという回答が５５％であった。これもケータイでの動画視聴に拍車をかける要因である。

仕事から家に戻りテレビをつけては見たものの見たい番組がないとケータイに手が伸びてしまう。この慣習がQlick.TVやまるごとアニメに視聴者が急激に増えた要因であろう。

ケータイは空間的な制限がない。どこでも持ち運びできる。お風呂にまで持ち込むというアンケート回答も結構あった。ついついベッドに入ってもアニメを見ている人が多いようである。その意味で今一番ユビキタスな存在であるのは間違いない。

もうひとつメディアとしてのケータイの特徴として見逃せないのは女性が多いということである。フロントメディアのアンケートによると動画視聴の40％以上は女性であった。これもケータイ動画マーケティングとっては見逃せない情報である。この女性層を捉えられるかどうかが今後のケータイ動画ビジネスにとっての大きなポイントである。まるごとアニメでも今後女性向けのコンテンツを増やしていきたいと考えている。

ケータイアニメ最新事情1３

ケータイアニメな人々４〜いつどこで見ているのか？

ケータイアニメな人々はいつどこアニメを見ているのだろうか？誠に興味深いことである。
通勤途中であろうか。それとも昼休み、あるいは移動の間であろうか。これについては当初様々な論議を呼んだがアンケートを取った結果意外な？結果が出たのである。

アニメを含むケータイ動画一番見られている時間帯は夜の11時過ぎであった。これはケータイでの通話ピークと重なる。どうも家に帰ってからゆっくりアニメを見ているらしいのである。休日に見るという回答も多かった。従ってアニメが見られている場所は自宅なのである。次第に視聴時間帯が浅くなり夜8時過ぎの時間帯も上がり気味で早く家に帰った時に見ているようだ。

おそらく多くの人間は帰宅すると同時にテレビのスイッチを入れる習慣があるはずだ。しかし、その時見たい番組がなかった場合何をするか。ケータイ世代の人間ならほぼ間違いなくケータイに手が行くであろう。条件反射である。気がつくとメールを書いたりゲームをしている自分を発見する。もしその時に動画という選択肢があれば食指が動くのは当然である。

「まるごとアニメ」の視聴者が顕著に増えたのはそういったケータイ世代に動画視聴という選択肢がインプットされたからであろう。ケータイで動画という認識は現在凄い勢いで伝播している。ケータイ動画時代は目前に迫っているのだ。

ケータイアニメ最新事情12

ケータイアニメな人々３〜ケータイアニメはバーチャルレンタルビデオ店？

ライトなファン層にヒットしたと思われるケータイアニメ配信であるが、利便性ではレンタルより遙か上である。いちいち返却しに行かなくてもよいし料金も自動引き落としである。価格も1話105円なのでレンタルとほとんど変わらない。その意味で便利なバーチャルレンタルビデオ店である。

そういった利便性があるためか一度見ると止まらなくなることもあるようだ。テレビシリーズ26話を3日間で見切ってしまったというのが現時点での記録だが、最近1,000円パック（テレビシリーズワンクール分＝13話視聴可能）、2,000円パック（ツークール分）といったパックセットの販売が好調なのもシリーズを通して見られるケースが多いことを示している。

まるアニ開始当初にあった果たしてケータイでアニメを見るのだろうかという疑問は完全に吹き飛んだ。やはり見るのである。フロントメディアの視聴者アンケートでも1日2〜3時間はケータイに接しているという回答が多かった。通話時間はそれほどないはずなのでパケ放題を利用したメール、ゲーム、着うた、サイト閲覧による情報収集が多いのだろうが、そこに動画を見るという楽しみが加わったようだ。

ケータイアニメ最新事情11

ケータイアニメな人々２

７月２０日からエヴァンゲリオンの無料配信（１話〜５話）がはじまったこともあり８月に入り視聴者がグーンと伸びている。では、実際ケータイで見られているアニメはどういったものだろうか？

まるごとアニメでいえば『新世紀エヴァンゲリオン』『ひぐらしのなく頃に』『藍より青し』『フルーツバスケット』『こいこい７』『涼風』といった深夜系アニメに人気が集まっている。

今のところ視聴者は青年層以上で中学生以下の子どもがケータイでアニメを見ている様子はない。ケータイを使用する層が広がれば可能性が出てくるかもしれないが、料金支払（当然親が支払うことになるのであろうが）の問題などを考えても先行きは不透明である。この層を対象とするアニメはほとんどゴールデンタイムや土日の午前中にオンエアーされているのでそれを見れば十分なのかもしれない。従って、プログラム的にも青年層に向けた深夜枠アニメを中心とした編成となっている。

アニメを一番熱心に見る層はＤＶＤまで購入するがその中心は３０代である。その上の世代も結構いて戦艦ヤマト以来アニメを見続けている世代はすでに５０代に突入している。

ところが先ほどのケータイ利用者特性にあったように４０代以上でアニメ（というか動画全体であるが）を見ている人間はほとんどいない。まるアニでも中心は１０代から３０代である。ＤＶＤ購買層の主力である３０代とは重なっているがそれ以下の層にも結構見られている。これはアニメビジネス的にいえばライトなファン層がかなり含まれているということである。好きなアニメをレンタルで借りる人々である。ケータイによるアニメ配信はどうやらそういった層にヒットしたようである。

ケータイアニメビジネス最新事情10

ケータイアニメな人々１

ケータイでアニメを見ているのはどういった人々なのか。ケータイアニメな人々については再三紹介しているフロントメディア代表市川茂浩の『誰も知らなかったケータイ世代』に詳しいが、ここでは自分なりの解説を加えながらその実体に迫ってみたいと思う。

まず第一に言えることは若い世代が多いということである。フロントメディアの視聴者アンケートでも世代的に一番多いのは１０代で次が２０代、３０代と続きこの三世代でほぼ１００％を占めている。４０代以上はほとんどいない。これはパケ放題の世代加入率とほぼ同期している。

今の１０代、２０代は明らかに「ケータイ世代」である。ＰＣより先にケータイに触れて育った世代で、ケータイを単なる通話ツールとしてではなくコミュニケーションや情報収集の中心と考える若者たちである。

彼らは新聞や雑誌を余り読まない。ひょっとするとテレビも余り見ないのではないだろうか。必要なものは全てケータイにあるようだ。だから活字文化中心の世代はもちろんＰＣを中心とする世代とも明らかに異なる。

この世代には従来のマス・メディアのマーケティングは効かないように思える。放送のように同時に一方に流れ出して行くメディアではないからだ。ケータイはどちらかといえばプライベートでオン・デマンドなメディアである。しかし、そのプライベートの集合が巨大なマーケットを形成しているのである。そしてあと１０年も経てばこのケータイ世代があらゆるマーケットの主役となるのだ。その意味でもケータイに対してどう取り組むかがどの企業にとっても大きな課題となってくるであろう。

ケータイアニメ最新事情９

ブレイクの兆し

まるごとアニメの数字が急激に伸びはじめそうな気配を見せたのは今年2007年に入ってからのことであった。これには幾つかの理由が考えられる。

ひとつめは、なによりも「アニメがケータイで見られる」という認識が広まったからであろう。Qlick.TVとの連動やライバルサイトが次々と立ち上がったことによって全体認知が高まったのは間違いない。

二つ目は昨年秋開始のナンバー・ポータビリティである。機種の買い換えによって動画を見られる環境の端末が増えたのも大きな要因と思われる。

三つ目はコンテンツの充実。最初はなかなかコンテンツが揃わず苦労したが、徐々に浸透することによってコンテンツ・ホルダーからの理解も得られるようになり作品が集まるようになった。特に昨年末から配信がはじまったエヴァンゲリオン効果は大きかった。やはり１０年に一度の大作である（正確には１２年であるが）。

このような要素によって急激に視聴回数が伸びはじめたのだが、では実際ケータイでアニメを見ているのはどういった人々なのであろうか。

ケータイアニメ最新事情８

ライバル続々登場

2006年3月まるごとアニメ、2006年5月Qlick.TVと連続してサイトをオープンし、ケータイにおける動画配信という未知の大海を一人ゆくフロントメディアであったが、さすがに動きの速いＩＴ業界、すぐにライバルが現れはじめた。

最初に動きを見せたのはディズニーであった。多くのファンが集うといわれていたサイトにおける動画配信を本格的に開始したのである。

その次に参入したのがバンダイ・ネットワークスのアニメモビ。ガンダムなどの魅力的なコンテンツを揃え勇躍8月にオープンした。

新しいメディアにとってライバルが現れるのは脅威でもあるが、市場全体を活性化し形成するという意味では心強い味方である。実際、参入が続いた夏から秋にかけてケータイによる動画配信の認知も高まる気配を見せた。そして、いよいよ本格的に動画配信の季節がはじまるのである。そのきっかけになったのはナンバー・ポータビリティであった。

ケータイアニメ最新事情７

コンテンツ屋から見たＩＴ屋

今回は考えても見なかったケータイというＩＴ業界で働くことになって感じたことについて述べてみる。

私は自分のことをコンテンツ屋だと思っている。音楽、映像、出版、そしてアニメを手がけてきた。キャリアから見てもコンテンツ畑一筋なのだが、縁あってＩＴの仕事に関わるようになった。ということで私の目から見たＩＴ屋について述べてみたいと思う。

面白いのはコンテンツ屋とＩＴ屋のカルチャー・ギャップである。古くて申し訳ないが野坂昭如の歌のように、コンテンツ屋とＩＴ屋の間には「深くて暗い川がある」（黒の舟歌）ように見える。私が見る限り両者に接点はほとんどない。

コンテンツ屋はＩＴ屋を、「中味も知らずにコンテンツをくれくれとしか言わないうざったい野郎」と思っているし、ＩＴ屋はコンテンツ屋を「売ってやるって言ってるのに、理由もなく出し惜みする著作権野郎」と思っている。コンテンツ屋の私は前者の立場であったが、フロントメディアに来て後者の立場も理解できるようになった。

合流しながら違った色のままで流れて行くアマゾン川の風景をテレビで見たことがあるが、楽天とＴＢＳは「合流」できるのだろうか？コンテンツ屋とＩＴ屋に「融合」はあり得るのだろうか。

コンテンツ屋というのは実は非効率的な商売である。映画や音楽、雑誌や書籍、マンガやアニメ、ゲームもそうだが当たる確率は低い。コンテンツ屋のギャラを決めるのは労働量ではなくお客さんの評価である。だから金目当てでやるには余りにも割に合わないし、もしそうならコンテンツ屋なんかやってる場合ではない。

一方ＩＴ屋というのは最大効率を目指す商売である。コンテンツ配信にしても効率がよければ（売れれば）中味は何でもいいのである。ということで根本的に思考性が異なるコンテンツ屋とＩＴ屋に言葉の互換性はない。

ライブドアとフジ、楽天とＴＢＳもそうだがＩＴ屋がコンテンツ屋を買おうとするから話がややこしくなるのである。このパターンだとほとんどうまくいく可能性はない。いっそコンテンツ屋がＩＴ屋を買えばいいのである。実際、アメリカではコンテンツ屋（映画会社）がＩＴ屋（ネット企業）をばんばん買いはじめている。だからＴＢＳが楽天を買えばいいのである。

「放送と通信の融合」もそうだが、アメリカのようなコンテンツとメディアの垂直統合を進める上でのキー・プレイヤーは明らかに放送局である。映画のラインアップを見てもわかるように、実質的に製作・制作しているのはテレビ局であり、要するに日本の映像コンテンツを支配しているのである。

しかし、テレビ局は「放送と通信の融合」に消極的、アメリカの様な垂直統合も目指さない。どうして、ニューズやワーナーのようなコンテンツとメディアが融合した世界的なメガ・コンテンツ＆メディア企業を目指さないのであろうか。余りにも美味しすぎる免許事業とはいえ、そろそろ世界を目指さないと日本のコンテンツ＆メディアは取り残されるであろう。

ケータイアニメ最新事情５

Qlick.TV誕生

スタートを切るのは早かったまるごとアニメであるが、３ヶ月間のダッシュが効いたのかオープン後はしばし放心状態であった（実際私も疲れ果てていた）。テレビアニメがたった100円で見られるのだが訪れる人は少ない。無理もない、ケータイでアニメが見られるなんて誰も知らないのだ。作品を提供してくれるコンテンツ・ホルダーの動きも鈍い（パケ放題に入っている担当者がほとんどいない状態なので仕方がないが）。

そんな時に力強い味方が現れた。Qlick.TVである。これは昨年の５月からフロントメディアがスタートさせた総合動画サイトである。こちらはまるごとアニメと違って無料広告タイプであるから、遙かに多くの人間が集まる可能性がある。事実、オープニング記念でやった絢香のライブ中継には２万人もの人間がQlick.TVを見たのである。

Qlick.TVとまるごとアニメの関係は地上波テレビとＣＳの専門チャンネルのような関係である。地上波とＣＳでは絶対的な視聴者数が違う。そこで、Qlick.TVの方で無料配信をしてまるごとにアーカイブを置いて視聴者を誘導するというビジネスモデルが生まれた。

Qlick.TVではアニメ一話を一週間ずつ配信する。まるごとアニメ（以下、まるアニ）には全話アーカイブして置く。すると、Qlick.TVで見たが今すぐもっと先まで見たくなればまるアニに来てもらう。また、途中からQlick.TVを見た場合、一話目からまるアニで見てもらうというシステムができたのである。

◆ まるごとアニメの見方（現時点ではドコモのみ視聴可能：ｉモードｉメニュー→２のメニュー／検索→動画／ビデオクリップ→アニメ・特撮の４番目にある）
◆ Qlick.TVの見方（動画／ビデオクリップまではまるごとと同じ。総合／バラエティのジャンルにある）

ケータイアニメ最新事情４

まるごとアニメ開設

日本初というより世界初の長時間ストリーミング動画配信サイト「まるごとアニメ」が誕生したのは、話が出てからわずか４ヶ月後のことであった。スピードが命のケータイ業界にあってもこれは異例の早さである。この期間に、iモードの公式サイトとなり、さらに日本動画協会の公式サイトにもなった。３０代前後が主力の若い会社とはいえ凄まじいダッシュ力（これから比べるとアニメ業界は「止まっている」ように見える）。

配信するコンテンツも手塚プロ作品を含め数社から預けてもらえることになったが、ほとんどの会社は様子見ということで態度保留というところが多かった。ようやくＢＢが定着したところでもあり、海のものとも山のものともわからないケータイ動画配信に対して消極的なのもうなずける。

また、先方の配信担当者も年代的にケータイ事情をわかる人間が少なく、説明しても実感が湧かないということが多々あった。自分も少し前までは同じ状況であったのでそのへんは理解できた。やはり、ケータイには世代によって大きな段差があるのだ。

こうして２００６年３月２０日にまるごとアニメがオープンした。そして、その日から開催された東京国際アニメフェアでデモンストレーションを行った。その時の反応は様々で素直に驚く人間もいれば、ケータイでアニメをまるごと見られるという事実を受け入れられないという人もいるといった状況であった。
こうして未知の大海に一人漕ぎだして行ったである。

まるごとアニメの視聴方法（現時点ではドコモのみ視聴可能：ｉモードｉメニュー→２のメニュー／検索→動画／ビデオクリップ→アニメ・特撮の４番目にある）

ケータイアニメビジネス最新事情３

フロントメディア設立へ

めていた会社でヒットを飛ばしてブイブイ言わせていたようである。聞くところによるとケータイ音楽サイトを次々と立ち上げ会社の売上をかなり伸ばしたとか。

しかしながら、昔から独立心旺盛であったようで自立の道を選んだようだ（売上の割に給料が上がらなかったからという説もある）。しばらくはディズニーの音楽のアグリゲーターをするなどフリーの道を歩み、満を持して一昨年の初夏にフロントメディアを設立した。

「動画の長時間配信が可能になったんです。アニメのサイトを立ち上げるので手伝ってくれませんか」と突然言われたのは２００５年の年末が近づいた頃である。その頃、私は既にマッドハウスを辞めて幾つか仕事を掛け持ちしており、フロントメディアでも着うたサイトで配信する音声アニメ番組の制作を手伝っていた。

その当時、長時間の動画配信の可能性はあるだろうが実現は早くて２年〜３年はかかるであろうと言われていた。それが直ぐにでも出来るという。いつもながらの唐突さであるがスピードが勝負のＩＴ業界なら当たり前のことである。その後トントン拍子に話は進みいよいよ日本初のアニメサイトのスタートと相成なるのである。

フロントメディアＨＰ
その当時の市川氏は務めていた会社でヒットを飛ばしてブイブイ言わせていたようである。聞くところによるとケータイ音楽サイトを次々と立ち上げ会社の売上をかなり伸ばしたとか。

しかしながら、昔から独立心旺盛であったようで自立の道を選んだようだ（売上の割に給料が上がらなかったからという説もある）。しばらくはディズニーの音楽のアグリゲーターをするなどフリーの道を歩み、満を持して一昨年の初夏にフロントメディアを設立した。

「動画の長時間配信が可能になったんです。アニメのサイトを立ち上げるので手伝ってくれませんか」と突然言われたのは２００５年の年末が近づいた頃である。その頃、私は既にマッドハウスを辞めて幾つか仕事を掛け持ちしており、フロントメディアでも着うたサイトで配信する音声アニメ番組の制作を手伝っていた。

その当時、長時間の動画配信の可能性はあるだろうが実現は早くて２年〜３年はかかるであろうと言われていた。それが直ぐにでも出来るという。いつもながらの唐突さであるがスピードが勝負のＩＴ業界なら当たり前のことである。その後トントン拍子に話は進みいよいよ日本初のアニメサイトのスタートと相成なるのである。

フロントメディアＨＰ
http://www.frontmedia.jp/

ケータイアニメビジネス最新事情２

ケータイでアニメを流したい！？

当時渋谷にあるケータイ・コンテンツの会社で働いていた市川氏はほとんど飛び込みに近い形でマッドハウスを訪れた。時は２００３年、彼はまだ２０代後半であった。要件は何かというと、「ケータイでアニメを流したい」ということであった。

もちろん、当時ケータイで動画を流すなどということは夢のまた夢の出来事のように思われた。しかし、今のケータイコンテンツは音楽配信が主流だが、これから絶対映像の時代が来る、だからケータイ用のアニメを制作したいのだと熱心に説くので話を聞いてみることになった。

ところが、ケータイ屋が考えるアニメとアニメ屋が考えるアニメとでは余りにもレベルが違いすぎた。市川氏が考えていたのは比較的簡単に出来るショート・コンテンツであり、内容的にも予算的にも長大重厚を得意とするスタジオとは相容れないものであった。

そういった経緯で結局話は流れてしまったのだが、それから氏との付き合いがはじまったのである。非常に前向きでアグレッシュブな感覚を持ち、アニメも好きだという。それから時折食事などを共にしていたが、会社を辞めるという電話をくれたのは出会いから１年半余り経った頃であった。

ケータイアニメビジネス最前線１

キーボードよりテン・キーを打つ方が早い世代

アニメ関連のビジネス情報として私が現在かかわっているケータイアニメ配信について述べてみたい。私自身もそうだがケータイについては伺い知れない部分が多く直に接して眼からウロコが落ちるような衝撃を何度も味わった。もの心ついた時からケータイがある世代と、私のように中年の域に差しかかってからつかいはじめた世代ではケータイの受容において明かにカルチャー・ギャップがあるのだ。このケータイ最新事情ではそういった世代間のギャップやケータイにおけるアニメの最新情報などについて伝えていきたい。

私が社会で働きはじめた時にはもちろんパソコンなどというものはなかった。ＦＡＸさえなかった。だから、コールバックしてくれない人間とアポを取ろうと思えばつかまるまで何遍も電話をかけなければならなかった（もちろん、手紙かハガキという手段もあったがさすがにそういう時代ではなかったが）。

それから比べると、ほとんど生まれた時からケータイを手にしている人々はコミュニケーション手段において全く認識が違うようである。このケータイ世代はまたパソコン世代とその感覚が大きく異なっており、そのあたりについては一度紹介したフロントメディア代表市川茂浩の『誰も知らなかったケータイ世代』に詳しい。

この本は目からウロコが３枚くらい落ちる本なので是非読んで欲しい。１０代〜２０代に対するマーケティングが必要な人間は必読の書。キーボードより携帯のテン・キーを打つ方が早い世代とケータイの関係が非常によくわかる。

この市川氏に出会ったのは今から４年ほど前の２００３年であった。