海外における放映事情2〜フランス“文化侵略事件”1
ここで紹介するのは、海外における日本製アニメの活躍ぶりが伝えられるかなり以前に起こった「事件」で、日本製アニメの人気が過熱する余り放送禁止や規制といった社会的事件を引き起こしたケースである。その代表がフランス“文化侵略事件”であった。
時は1977年、当時フランスの国営放送は三チャンネルに分かれたばかりで極端なソフト不足に陥っていた。そのため、公営放送のANTENNE2は1978年7月から「RECRE A2」という水曜の午後の子供番組枠で急遽東映動画(現東映アニメーション)製作の『ゴルドラック』(邦題『グレンダイザー』)や『キャンディ♥キャンディ』、『アルバトール』(放題『宇宙海賊キャプテンハーロック』)を買い付けて放映することにした。それまでフランスでは、どこの国でもそうであるようにディズニー・タッチのいわゆる「健全」なアニメが主流で、(彼らからすれば)世界の果てにある日本の訳のわからないアニメなど逼迫した事情でもなければ見向きもしなかったであろう。
フランスの子どもたちの前に突然現れた『ゴルドラック』は、それまでのキッズアニメの常識を完全に覆すものであった。リアルな世界観、スピーディな展開、そしてバイオレンスといった要素をふんだんに持っていた『ゴルドラック』は、たちまちのうちにフランスの少年たちの心を捉え、空前のブームを巻き起こす。その勢いは「世代視聴率一〇〇%」といわれるほどで、時の大統領だったジスカールデスタン大統領の夫人が、「孫のためにゴルドラックの玩具が欲しい」と言ったという話がまことしやかにささやかれるほどであった。
さらに『ゴルドラック』に続いて放映された『キャンディ♥キャンディ』や『アルバトール』(邦題『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』)も大ヒットし、日本のアニメはフランスを初めとするヨーロッパ各国を席巻することになるのだが、その成功が余りに大きかったためその反動も尋常ではなかった。
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