岩波ジュニア新書アニメ関連本〜辻真先『ぼくたちのアニメ史』(岩波ジュニア新書780円+税)③〜未来に向けられた視線
『ぼくたちのアニメ史』とあるから、ご本人の体験を基にした自伝的な本と思う方もいるかも知れないが決してそれだけではない。体系的に日本のアニメの歴史を語りながらも目線は過去ではなく未来に向かっている。これこそ辻さんの真骨頂であろう。 本書で論評されている最近のアニメが凄いのである。『灰羽連盟』『ひぐらしのなく頃』『蒼穹のファフナー』『かみちゅ』と来て、『アフロサムライ』『ぼくらの』『大江戸ロケット』『電脳コイル』である。おそらく辻さんは話題になっていたり注目されているアニメのほとんどに目を通しているのではないか。喜寿を迎える人間とはとても思えないが、巻末にも書いてあるように本当にアニメが好きなのであろう。 また制作会社に関するエピソードも相当面白い。虫プロからはじまって東京ムービー、東映アニメーション、エイケン、シンエイ、タツノコなど老舗のエピソードには興味深いものがあるが、ジブリやプロダクションIG、GONZO、マッドハウスといった気鋭の会社に対しての論評も的確である。 もっと辻さんの業績を知りたいならば、以前の著書であるが『TVアニメ青春期』をお勧めする。1960年代から70年代にかけてのテレビアニメの状況を詳しく伺い知ることができる。いつまでも衰えない好奇心でアニメ界を論評して頂きたいものである。
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