『フリーコピーの経済学』新宅純二郎・柳川範之編(日本経済新聞出版社2,800円税別)3
私的コピーは被害を与えているか
デジタル&インターネットの時代に突入して飛躍的にコピーが容易になった社会において、果たして「私的コピーは被害を与えているか」(本書第四章のテーマ)という問題が大きく浮上してきた。一般的にはその影響が大きいという意見に与する論調が大半である。それではこの問いに対して本書ではどのように答えているのか?
それは音楽CDとアニメDVDのパッケージ売上とインターネットの違法ファイルダウンロード数やYouTube視聴数などがそのような相関関係があるのか統計をつかった実証調査を元に述べられており、一般的には違法ファイルダウンロード数やYouTube視聴数が多いから、パッケージの売上に悪影響を与えているという現象は特に見られないと結論づけている。
それを説明する理由として三つ理由を挙げているが、そのひとつに「私的コピーと正規品は代替品ではない」(私的コピーは正規品の代替品ではないという意味だと思うが)というのがあるのだが、これは要するに「正規品を買う人々は、私的コピーが利用可能でも買うし、逆にコピー品で済ます人は、コピーが禁じられたからといって、正規品を買いに行くわけではない」ということだとしている。もっともなことである。
この他にも「コピーによる宣伝効果」「私的コピーの利用者の少なさ」などの理由が挙げられているがなるほどと思わせる論拠であった。その他にも注目すべき論点に本書は真正面から答えており非常に参考になった。さらに今後コンテンツ産業界にはどのようなビジネスの可能性があるのかについての示唆まであり、今後のコンテンツ産業を考える上での必読の書であろう。
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