杉並区アニメ事業者データ
この仕分けについての報道がなされたあとに、杉並アニメーションミュージアムについては存続させて欲しいという区民からの意見が幾つか寄せられたとのことであるが果たしてどうなるのであろうか(他にアニメーター養成の「杉並匠塾」、毎年春に行われている「アニメーションフェスティバルin杉並」がある)。実際どのような結論が出るかについては結局区民の意向次第であろう。
今回の仕分け事業において、区側が杉並区のアニメ産業についてのデータ収集が出来ていなかったということで論議以前の問題となってしまった。そのレベルでアニメ事業を判断されては堪らないと思って杉並区の差に産業の概要をまとめてみた。以前から分かっていたことではあるが今回の事を踏まえて発表しておきたい。毎度述べている通りデータが少ない業界なので万全とは言い難いが現状のデータの中では一番信憑性が高いと自信を持って言えるものである。
【杉並区におけるアニメ産業の概要】
1)事業者数
2010年11月現在、杉並区に在籍しているアニメ事業者は確認できた限りでいうと78社である。但し、アニメ事業者は一般に資本規模が小さく経営基盤も脆弱なため(逆に小規模での創業が可能なので参入しやすい面もある)、操業停止、あるいは移転などがままあるので実際の数字の高低は免れない。
2)企業分類
杉並区に在籍するアニメ企業の分類は以下の通りである。
|
分類 |
社数 |
① |
元請 |
9社 |
② |
準元請 |
9社 |
③ |
グロス請 |
8社 |
④ |
作画 |
17社 |
⑤ |
動画・仕上 |
1社 |
⑥ |
美術 |
15社 |
⑦ |
企画・制作 |
3社 |
⑧ |
撮影編集CG |
14社 |
⑨ |
音響・声優 |
1社 |
⑩ |
その他 |
2社 |
3)事業者存続年数
設立年数がわかっている61社を調べたところ最も古いのが創業43年になるトランスアーツ、最も新しいのが2010年のデーステイションであり、設立から平均年数は17年であった。尚、日本動画協会が2009年末から2010年度初頭にかけて実施した「アニメ産業コア人材育成事業」における報告書(以下、報告書という)の調査によるとアニメの制作・作画系企業110社の平均は19.2年、美術制作系企業28社の平均は21.2年であったことを考えるとやや短いと言えよう。
〈杉並区アニメ事業者設立年次〉
設立年次 |
社数 |
1967年〜1969年 |
3社 |
1970年〜1974年 |
5社 |
1975年〜1979年 |
3社 |
1980年〜1984年 |
4社 |
1985年〜1989年 |
9社 |
1990年〜1994年 |
4社 |
1995年〜1999年 |
9社 |
2000年〜2004年 |
13社 |
2005年〜2010年 |
9社 |
4)資本金
資本金が判明している44社の平均は119,332,660億円であった。しかし、突出した資本金であるゴンゾ(33億6,147万円)を除く43社の平均は4,522万円、また白組(4.55億円)、マッドボックス(3.55億円)、アークトゥルースサテライト(特例有限会社3億円)、サテライト(275,074,850円)、ワオワールド(1億円)、A-1ピクチャーズ(1億円)を除く38社の平均は9,458,295円であった。資本金が判明していない会社もおそらくそのほとんどが1千万円以下と推測されるので全体ではそれ以下になるものと思われる。(但し、白組は本社渋谷区在籍)
動画協会の報告書によれば制作・作画系企業104社の平均資本金はおよそ1億7千万円、突出した企業3社を除く平均は2,477万円であった。また下記資本分布図を見ると、資本金が判明しない事業者の規模を鑑みても比較的小規模事業者が多いのではないかと推測される。
〈杉並区アニメ事業者資本金分布〉
資本金 |
社数 |
33億円 |
1社 |
4.55億円 |
1社 |
3.55億円 |
1社 |
2.75億円 |
1社 |
1億円 |
2社 |
6,600万円 |
1社 |
4,900万円 |
1社 |
3,000万円 |
2社 |
2,000万円 |
1社 |
1,000万円 |
8社 |
301万円〜999万円 |
4社 |
300万円 |
19社 |
30万円 |
1社 |
10万円 |
1社 |
5)売上規模
アニメ事業者における売上規模に関するデータは現時点ではない。従って杉並区に関する調査もないが、動画協会や帝国データバンク等の資料によると推定年間売上は500億円前後ではないかと推定される。杉並区におけるトップアニメ事業者の売上が100億前後、のこの中には同じ仕事を元請けから下請けに回した数字も含まれる。
6)従業員数
先ほどの動画協会の調査で従業員数が判明している41社の従業員数トータルは1,360名で平均33.17名。最高が214名、最低が6名であった。また各企業分類における平均従業員数を当てはめて不明企業分を推定すると979名なので、合計2,332名の雇用があるものと思われる。但し、アニメ企業の場合、雇用契約を結ばないアニメーターなどフリーの存在が大きく常時3〜4倍の人員がそれら企業のために働いているものと思われる。
7)地域分布(50音順)
① 阿佐ヶ谷9社
② 天沼・本天沼4社
③ 荻窪9社
④ 井草9社
⑤ 梅里1社
⑥ 上井草6社
⑦ 上荻4社
⑧ 高円寺8社
⑨ 久我山1社
⑩ 清水5社
⑪ 下井草1社
⑫ 下高井戸1社
⑬ 松庵2社
⑭ 善福寺4社
⑮ 高井戸3社
⑯ 成田東3社
⑰ 浜田山1社
⑱ 桃井6社
これを見ると、アニメ事業者が中央線高円寺〜荻窪、西武新宿線下井草〜上井草に集積していることが窺える。中央線に関しては1970年代成田東にあった東京ムービー新社の下請けが集まったのをきっかけに、次第にマッドハウス(中野区に移転)、サテライトといった大手がスタジオを構えることで集積がはじまったものと推測される。
西武線に関しては東映アニメーションに次ぐ規模であるサンライズが創業時からここを本拠地としていたことが大きい。そのためその子会社や下請け会社、さらにボンズ、マングローブといったサンライズ出身社長の創業会社がやはりこの沿線に居を構えている。
杉並区にアニメ関連事業者が集積したのは、①日本商業アニメの発祥の地である大泉(東映アニメーション)や富士見台(虫プロ)から地理的に近くそれらから派生した会社が根付いた、②都心から近いという立地の良さからであろうと思われる。
12月7日(火)から12日(日)まで上海出張なので、しばしお休みするか、あるいは向こうでアップできるかは時の運?(意味不明)です。
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