TYOのエンタティンメント構想
ウルトラマンで知られる円谷プロがTYOの傘下に入った。M&Aが一般化したとはいえ「国民的キャラクター」であるウルトラマンの動向は気になるところである。
円谷プロを傘下に収めたTYOは元もと日本で三本の指に入る大手CF制作会社である。創立者で現社長である吉田博昭氏はCFディレクターとして頂点を極めた人間で、実写とアニメの『ゴキブリたちの黄昏』(1987年)、オリバー・ストーン製作総指揮の『アイアン・メイズ ピッツバーグの幻想』(1991年)などの映画の監督を務めたことがある。
そんなTYOが数年前からユニークなエンタティンメント戦略に基づきアニメやゲームの制作会社を積極的にM&Aするようになった。その戦略については『TYOの勢いはなぜとまらないのか』(高嶋健夫/日経BP出版センター)に詳しいが、着々と傘下企業を増やし続けている。
TYOのエンタティンメント系グループ企業をジャンル分けすると映画からアニメ、ゲームから音楽まであり、アニメだけを見てもなかなか幅広い布陣となっている。
『ふしぎ星の☆ふたご姫』を制作し、『ケロロ軍曹』などの監督を務める佐藤順一氏が在籍するハル・フイルムメーカー、『アニメーション制作進行くろみちゃん』で知られるゆめ太カンパニーといった本格的な2D(セル)アニメ制作会社から、『アップル・シード』や『アタゴオルは猫の森』などのフル3D(CG)アニメで知られるデジタル・フロンティア、NHK-BSのキャラクター『どーもくん』や『こまねこ』などのパペット・アニメーション制作のドワーフまで実に多彩である。一時期『のだめカンタービレ』のテレビアニメ版をプロデュースしたジェンコも傘下にあったが一昨年離脱した。
これらの企業ラインアップに円谷プロが加わった。当然ウルトラマンのアニメ化なども視野に入ってのことであろう。企業のラインアップを見るとTYOがエンタティンメント業界でどこに軸を置こうとしているのか、にわかにはつかみがたいのは確かだが、このユニークな企業構成には注目せざるを得ないところである。
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