岩崎明彦/「フラガール」を支えた映画ファンドのスゴい仕組み(角川SSS新書/720円+税)
著者の岩崎明彦氏は映画やアニメ、ゲームといったコンテンツに対する投資を行うジャパン・デジタル・コンテンツ信託株式会社のファンド・マネージャーである。本書はタイトル通り、氏が製作にかかわった『フラガール』という映画を中心に書かれているが、いわゆる「コンテンツ・ファンド」の解説であると思ってよい。
映画もアニメもかつては製作会社が単独でファイナンスすることが多かったが、1980年代に入り、ビデオというメディアが生まれ、ビデオ・メーカー(レコード・メーカー)のファイナンスによるビジネス・モデルが誕生し、OVAを中心に多くのアニメがつくられるようになった。。
その後1990年代中盤以降から主流になったのが、いわゆる製作委員会によるファイナンスである。現在ではアニメのみならず映画もほとんどこのスタイルでつくられており、単独のファイナンスでつくられている作品を探すのが難しいほどである。
そして製作委員会の次に登場したファイナンス・システムが本書で説明されているコンテンツ・ファンドである。日本はこのシステムが誕生して日が浅いため、まだそれほど実績はないが確実に増えている。
『バジリスク』や『かいけつゾロリ』、『北斗の拳』の劇場版などのアニメはこのコンテンツ・ファンドによってつくられている。また30億円規模と言われている伊藤忠とターナー・ブロードキャスティング、さらに電通と三菱商事による大型アニメ・ファンドなども進行中である。
先ほども述べたように、このシステムが誕生してまだ日が浅いため結果が出ていないプロジェクトが多いが、コンテンツ製作に取っては歓迎すべきことなので早く成功例が見たいものである。
私もコンテンツ・ファンドの当事者として2作品の投資に参加した経験があるが、その時に感じたのは、これは通常のファンドでも同じであろうが、ファンド・マネージャーの重要性である。幸い私が参加したコンテンツ・ファンドは良きファンド・マネージャーに恵まれ、収支的には2戦2勝であった。著者の更なる活躍を期待したい。
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