相原博之『キャラ化するニッポン』(講談社現代新書/700円税別)
相原氏はバンダイのキャラクター研究所の所長である。立場上キャラ普及の伝道者なのであろうが、本を読めば氏の言わんとすることはもっともなことであると理解できる。
確かに現代はキャラクターありきの社会かも知れない。これはマンガ、アニメに限ったことではなく、情報過多の社会においては一目で視認できる「旗印」が自然と必要とされるからであろう。そういった傾向もあってか、最近のマンガ、アニメ、さらにライトノベルの分野ではストーリーよりもキャラクターを重要視する傾向が強い。まずキャラありき、その造形次第で作品成功の可否が決まる場合が多い。
マンガ原作が次々と実写ドラマ化されてゆく現象について、著者は「『生身の現実世界』よりも『キャラ的現実世界』に親近感を覚える日本人たちの特性を見出すことができるのだ」と述べているが、日本人が全てそうであるかどうかはわからないが、いわゆるオタク層の中には生身の人間よりアニメのキャラクターの方が好きだという人間が多い。
実はアニメビジネスがわかる本32で紹介した『出発点1979年〜1996年』の中で、宮崎駿氏が大学受験の頃に『白蛇伝』に登場するヒロインに恋をしたと述べているが、おそらくそういう要素を身につけていたからこそ、ナウシカをはじめとする魅力的な女性キャラクターを造形できたのであろう。
著者は『くまのがっこう』という絵本の原作者でもある。バンダイが得意とするマンガ、アニメに登場するような派手なキャラクターとはちょっと違った慎ましいキャラの絵本であるが、評判がよくシリーズ化されアニメにもなっている。
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