アニメの仕事7〜プロデューサー、監督、アニメーター、原作者、脚本家、美術、声優
小黒祐一郎『この人に話を聞きたい アニメプロフェッショナルの仕事 1998-2001』(飛鳥新社/2,857円税別)
今までアニメの仕事に関する本を紹介してきたが、プロデューサー、監督、アニメーター、原作者、脚本家、美術、声優といった職制を知るために有効な書籍を紹介する。
著者の小黒祐一郎氏は徳間書店の「アニメージュ」出身のライターであるが実に多くのアニメ関連の仕事をこなしており、その知識は日本のアニメの生き字引ともいえるであろう。氏の志向性は主宰するWeb、「アニメスタイル」で伺い知ることができる。
http://www.style.fm/as/index.shtml
『この人に話を聞きたい』は月刊「アニメージュ」で連載されたものをまとめたものであるが何と500ページ以上というボリュームを誇る。しかし、一旦読み出すと少しも飽きることなく(もちろんアニメに興味があればの話だが)最後まで読み通すことができる。
感心するのはインタビュー前に小黒氏がほぼ完璧に相手についてのデータを予習していることである。だから時々インタビューされる本人も忘れているような作品名が飛び出したりする。
小黒氏のアニメに対する見識は様々な人間に影響を与えているようで、東浩紀の『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)やローランド・ケルツの『ジャパナメリカ』(ランダムハウス講談社)などに氏の名前が登場する。
東浩紀は小黒氏との会話で、「七〇年代のアニメ作家たちは、大きく表現主義と物語主義の二つに分けられると言われている」との示唆を受けたと述べている。表現主義派は大塚康生、宮崎駿、高畑勲といった東映動画出身の人間たちであり、物語主義派はりんたろう、安彦良和、富野由悠季といった虫プロ出身の人々である。
ローランド・ケルツは小黒氏と思しき「小野」から、「最近、アメリカにたくさんオタクがいるみたいだけど、実をいうと、僕等はあなたたちから学んだんだ。オタクが始まったのはアメリカ、僕が中学生だった頃の、『スター・トレック』のファンがオタクの元祖だ。彼らは活動し、衣装も持っていた。当時、アメリカはすでに『オタク』を実践していた。まさか日本で広まるなんて思わなかった」と告げられてショックを受けている。
小黒氏のインタビューは月刊「アニメージュ」でまだ連載中である。既にパート2を出せるに十分な量に達していると思うので是非続編をお願いしたい。と同時に東浩紀やローランド・ケルツが触発を受けたアニメの文化論も是非まとめて欲しいと願う次第である。
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