名和小太郎『情報の私有・共有・公有』(NTT出版/2,500円税別)
昨日述べた名和小太郎氏が予言するところの将来的な著作権像について説明したい。
(1) の「伝統型著作者による標準型著作権像」はいわゆる、作家、作詞・作曲家、脚本家、映像製作者など、既存の著作権者が望む現在主流の著作権の在り方である。これは著作財産権+著作人格権の両方求める非常に強いタイプの著作権像である
(2) の「財産権指向型作者による強い著作権像」は著作権の内、財産権だけを強く求める市場指向型のタイプである。人格権にはこだわらず、とにかくどんどんつかってもらう。デジタル技術やソフトウエア、デジタル・コンテンツを取り扱う事業者、また配信事業にシフトしつつあるレコード会社、放送事業者などの隣接権者もここに入る。
(3) の「人格指向型作者による弱い著作権像」はユーザー主導型で、ハッカーや大学の研究者が主張するところの著作権像である。財産権を求めない彼らはフリー・ソフトウエア、P2Pといった発想をする。
この三つのタイプの著作権指向が、各々、あるいは相互に関係しながら将来的な著作権法の思想的基盤となってゆくというのが名和氏の予測である。そのあたりの考え方については、『ディジタル著作権』を補足する『情報の私有・共有・公有』も併せて読むことでほぼ理解できる。こちらの方が『ディジタル著作権』より発刊年も新しく(『ディジタル著作権』2004年、『情報の私有・共有・公有』2006年)、例証が具体的なので理解しやすい。
コメント