馬場錬成・成志強『変貌する中国知材現場』〜「ニセモノ大国」から「知材大国」へ(B&Tブックス・日刊工業新聞社/1,800円税別)
韓国もそうであるが、今中国では国を挙げてアニメ産業の育成を後押ししている。全国の大学に次々とアニメ学部や学科が誕生しているとのことであるが、日本のアニメの流通(上映・放映・販売)を禁止してまで自国産業を育てようとしているとのことで、その現状はどうなのであろう。
これまでの中国の知材戦略は非常に明快で、内に優しく、外に厳しくというものであった。簡単に言えば違法コピー天国ということであるが、これが実際に自分たちが知材をつくる立場になると、逆に大きなネックとなるのである。
日本にせよアメリカにせよ、基本的なアニメのビジネスモデルは興行、放映、パッケージ販売、商品化権、海外販売などで成り立っている。しかし、違法コピーが蔓延する中国では、これらの事業がほとんど成立しない。かろうじて収益ソースとして望めるのは興行と放映とだけであるが、現状劇場アニメはほとんどつくられておらず、また放送局から支払われる放映権料も非常に安い。
つまり、中国ではアニメを製作しても回収のビジネスモデルを組み立てられないのである。もちろん、日本と比べて製作費はかなり安いと思われるが、この状況ではビジネスは成立しない。
自国のアニメビジネスを成立させるためには違法コピーを排除、知材権を確立し、アニメビジネスを組み立てるしかないが、同時にそれは少子化、人口減が進む日本のアニメ産業にとっても非常に大きな意味を持つことになる。その意味で中国のアニメ産業が早く立ち上がるよう見守って行きたい。
『変貌する中国知材現場』は中国知材現場の状況を伝える本である。本書を読むと中国ではソフト、コンテンツといった知材に対する認識が大きく変わりつつあることが感じられる。以前紹介した『コンテンツビジネス in 中国』と併せて読むと、ほぼ実態が把握できる。
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