アニメ右肩上がりの要因3〜ファイナンスシステムの多様化による牽引効果
ファイナンスシステムの多様化③〜新しいタイプのファイナンス
11月15日のBS朝日「賢者たちの選択」で昨年大ヒットした『フラ・ガール』を支えた映画ファンドというテーマで、JDC(ジャパン・デジタル・コンテンツ信託株式会社)の土井宏文代表がゲストに招かれていた。1998年に設立されほぼ10年が経過するが、『フラ・ガール』のブレイクでようやくファンドによるコンテンツ製作という手法が認知されたようである。
このコンテンツ・ファンドの仕組みについては、土井氏の『コンテンツビジネス法務・財務/実務論—デジタルハリウッド大学院講義録』や同社の岩崎明彦氏による『“フラガール”を支えた映画ファンドのスゴい仕組み』などに詳しいが、製作委員開放式に次ぐ新しいファイナンス・システムとして注目を集めつつある。
今のところシネ・カノンのファンドに見られるように、実写映画では浸透しつつこのシステムであるが、アニメではまだ具体的案件が少ない。JDCが手がけたGDH制作の『バジリスク』や、ノース・スター・ピクチャーズが制作した劇場版『北斗の拳』などが代表的である。この他に私募債で制作されたアニメも幾つかあるが、結果が出ている案件は何れにせよ少ない。
映画と比べて、なぜアニメが少ないかについては幾つかの理由が考えられる。ひとつには映画とアニメのビジネス構造の違いからくるものである。これはどういうことかというと、アニメの場合、企画からファイナンス、製作、運用に至るまでのシステムがほぼ確立され、パターン化しているためである。
アニメ業界では製作に参加する企業が整然と決まる場合が少なからずある。ある種シンジュケーションともいえるネットワークが幾つもあり、外部に対する資金需要が浮かび上がりにくい。
この種の資金需要が今後アニメ業界内部に生まれるかどうかについては、認知度の問題もあろうが、既存のアニメとは違ったニッチなマーケットへ向けた作品や、意欲的な若手経営者がつくろうとする作品にあるのではないかと思われる。
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