アニメビジネスがわかる本

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2008/01/10

コメント

KEI

ネットでのお話が出ていたので、書き込みさせていただきます。最近ニコニコ動画で削除対象となっていないアニメを多数見かけます。

それこそサンライズのアニメなどは瞬殺のようですが、マイナーなアニメや京アニ作品など下手すると数日にわたって目立つランキングページに掲載され続けるアニメもあります。これも制作者側の試行錯誤の一環なのでしょうか。

私個人はアニメ業界の苦境を救うには、パイを広げる、=海外展開しかないと考えていますが、全作品で英語版を最初から用意するというのは不可能なのでしょうか。

アメリカでは声優という職業がないとも聞きますが、英語圏の声優育成など、それこそ業界が一致団結して取り組むべき問題のように思います。

増田

増田です。
コメント有り難う御座います。

まず削除問題ですが、コンテンツホルダーとしては絶対不許可という考え方が支配的です。ただし、効果を実感している事業者もいるので、自分たちに取ってメリットのあるアップは可、デメリットなアップは即削除というような考えを持っているところもあると思います。

ただ、大きな事業者は立場上強い著作権の在り方を支持しなければならないので、その使い分けが出来るかどうかだと思います。また、ほとんどが製作委員会方式なので、全社の合意を取るのが、これまた大変です。

おそらく、サイトをやってる事業者と話し合いながら、ある種の基準を設けるということになるのではないかと思います。YouTubeはその体制がほぼ整いつつあります。何れにせよ、ホルダーサイドもそろそろネットのプロモーション効果を真剣に考えなければならない時期がきているのは確かです。

サンライズ、京アニに関しては、これはネットに対する考え方がそもそも違っているのではないかと思います。つまりネットに対して肯定的か否定的かということです。京アニなどはネットのプロモーション力を実感しているのではないでしょうか。それに対してサンライズはその種の効果を実感したことがなく被害者意識の方が大きいと思います。実際、放っておいたら天文学的な映像がアップされると思います。

また、削除するための監視体制を整えられるかという企業としての人員の問題などがあります。小さな会社では実際そういうことに振り向けられる人材がいない場合が多いという事情もあります。

海外展開に関しては、おっしゃる通りです。しかし、言語展開については、やはりその国で字幕をつけるなり、吹き替えをするのが合理的だと思います。ホルダーが直接その国で事業するならともかく、ほとんどはその国の事業者がやるので、その方針に則ってやるのが一番合理的だと思います。

アメリカには確かに専門職としての声優(Voice Actor)という意識はないようです。メジャーな映画作品はほとんど有名俳優がやってます。基本的に声だけの仕事が多い人でも、俳優のユニオンに所属していると思われます。

アメリカの俳優は、歌って踊れて演技できるというのが当たり前というのがあります。喜劇役者のステーブ・マーチンという人がいますが、フレッド・アスティアよりうまいんじゃないかと思われるほどのタップの名手です。

なので、最初から声優だけを目指すという考え方はないのだと思います。その点、日本では声優という職域が成立します。これは海外作品の吹き替えとアニメが盛んという特殊事情によるものでしょう。

アメリカで日本のアニメの吹き替えをやる場合、コストをセーブするためにユニオン外の役者をつかうことが多いのです。よくカナダなどで吹き替えをやるのはユニオンの領域外であるためです。それでもギャラの水準はそれなりにあるようで、日本並みの音響費になってます。したがって、現地の事業者もホルダーに支払うアドバンス、音響費、製造費、宣伝費などを考えると結構なコストがかかります。

KEI

増田様
お忙しいなか、とても詳細な回答をありがとうございました。大変勉強になりました。

以下またコメントさせていただきますが、読み流していただければと思います。

> 小さな会社では実際そういうことに振り向けられる人材がいない

中小だと大変そうですね。ネット流出で得られる‘知名度’もマイナー作品なら実質0からのアップですが、
既に知名度があるガンダムなどはネットの灰色的な知名度向上に頼る必要は全くありませんね。

> ホルダーサイドもそろそろネットのプロモーション効果を真剣に考えなければならない時期がきているのは確かです。

私は地デジそのものが危ないのではないかと思えてなりません。
地デジのコピーガードを綺麗に除去する「フリーオ」が台湾から流入し話題ですが、地デジがフリーオで丸裸にされ、DVD並みの画質がP2PやVEOHなど海外の共有サイトに流出するのは時間の問題です。
フリーオそのものは輸入規制する動きがあるようですが、既に国内に入っている分もありますし、旅行者の持ち込みなどを考えればあまり意味のあることとは思えません。
高画質ソースの流出元となり続けるリスクを考えれば、逆に地デジから巣立つことを考える必要があるのではないかとさえ思えます。

ネットに注力するとしても、バンダイチャンネルのような動画配信が今後テレビに取って代われるかというと相当に疑問です。
視聴者側の「あれが見たい」という指名買いには向いていますが、テレビが担っていた知らない作品を知らしめるという観点からみると非常に弱いです。

そもそも視聴に会員IDが必要な時点でハードルが高いですが、Yahoo!動画のFAQにも色々書いてあるように、DRM認証絡みで結構な頻度でエラーが出るのも問題です。
テレビ並みの簡便性を持つネットシステムがあればいいのですが、それが家電メーカーの「アクトビラ」が目指すところなのでしょうか。

角川の社長が語るようにFLVサイトをいかに活かすかが今後の課題なのでしょうか。個人的にはファンが勝手にアップした高画質FLVを削除要請する一方で、ホルダー自ら低画質のFLVをYouTubeなどへ提供し、オンデマンドで見たい消費者の欲求を満たしつつ
同時に英訳付DVD販売へリードし、世界中にパイを広げるのが理想のように思えます。言うは易しではありますが。

> ほとんどはその国の事業者がやるので、その方針に則ってやるのが一番合理的だと思います。

現地に飛んで会社を一から作って、やはり大変でしょうか。現地の事業者に任せると質の確保が問題になりそうな気がしてなりません。

最近、質の高さが話題の京アニ作品の英訳版を見たのですが、確かに驚くほど声質、トーン、演技力ともに完璧に吹き替えられておりビックリしました。
どの作品でもあれだけの質が維持できれば良いのですが。

話は変わりますが、いま日経ビジネスオンラインで、遠藤 誉氏が中国のアニメ振興策を紹介していますが、それこそ人的、金銭共にもの凄い支援です。
アニメの源泉である漫画やライトノベルは日本の無宗教、ある種無秩序な社会体型から生まれると思っているので、国の後押しだけで日本のアニメが負けるとは思いませんが、羨ましいのは確かです。

海外に売れもしない刹那的なバラエティをばらまくテレビ局から、深夜帯の放映枠をアニメ用に無償解放するぐらいの振興策を麻生氏あたりが打ち出してくれてもいいのに、と思ったりしますが、それはそれで政府の紐付きになるのでやりにくいでしょうか(笑)

増田

KEIさま、色々ご指摘有り難う御座います。
地デジ、中国など書きたいことは沢山ありますが、ひとつひとつ言及するとブログ本文より長くなってしまいます。今後ブログで順治触れてゆきたいと思います。
今後も諸々ご指摘の程宜しくお願いします。

KEI

わざわざResありがとうございます。
これからもblogを拝見させていただきます。
アニメ業界の発展を願っております。

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