ネット上のファイル交換違法化の動き⑧〜一連の流れの根底にあるもの
一連のファイル交換にまつわる流れがどこから来ているのか。もちろん、業界団体等からの申し入れなどもあろうが、決定的なのは既に知られたことであるが2006年12月5日付の「日本国政府への米国政府要望書」の存在であろう。
この要望書については知られている割に論評されることがないが、郵政民営化など日本の政治的・経済的方向性に大きな影響を持っている。そして、この中で著作権存続期間の延長、著作権法の非親告化などの要望が述べられているのであるが、この中でも重要なのは著作権の私的利用の(ための複製)制限について謳われている点であろう。
「私的利用に関する例外 私的利用の例外範囲を限定し、ピア・ツー・ピアのファイル共有といった家庭内利用の範囲を超えることを示唆する行為が、権利者の許諾なしには認められないことを明らかにする」
著作権法では私的利用を以下のように規定している。
「第三十条 著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる」
ネット時代以前における私的利用は何の問題もなかった。「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」とあるように、遙か昔でいえば、ウォークマン用にアナログ盤からカセットに、最近ではCDからミニ・ディスクにダビングして音楽を楽しむことはごく自然な行為として捉えられていた。また、友人のためにコピーすることも、限られた範囲であれば認められていた。
いくら自分の気に入ってる音楽を人に聞かせたいと思っても、コピーするのには時間的にも金銭的にも限界がある。そして、そこが大量コピーに対するボトルネックとなっていたため、私的利用についても自ずから制限がかかっていた。
しかし、デジタル&ネットワークの時代になって、限りなく0に近いコストで無限のコピーが可能になった。「日本国政府への米国政府要望書」では、その行為の代表であるP2Pによるファイル交換が私的利用範囲を超えるという判断を示している。非営利であってもアップローダーは公衆送信権侵害、ダウンロードする側は著作権侵害となるということである。
コメント