『中国動漫新人類』に見る中国動漫事情③〜中国の「げんしけん」
『中国動漫新人類』の遠藤氏は戦中の中国で生まれた。そのまま戦後も在住し、1953年日本に帰国、長じて日本で理学博士となった経歴を持つ。ご自身の述べているようにマンガ、アニメとは縁のない生活を送ってきた学究の人間である。その氏がなぜこの本を書くに至ったのであろうか。
長年中国と関わって来た氏が1990年代半ばにある変化を肌で感じたことがあった。それは若者の変化である。氏曰く、1980年代以降に生まれた中国の若者は、明らかにその上の世代とは異なる「新人類」なのだそうである。
彼ら「新人類」が上の世代とどのように違っているかと言えば、「『中国』という国や政治体制への思い入れが非常に淡泊」であり、時には『中国』という国を突き放して考えるような」傾向を持っている。氏はその原因をあれこれ考えた。そして、そのひとつに、その世代の若者の多くが「日本の動漫を見て育った」ことにあると思い至る。そこから動漫に対する調査がはじまる。
まず長年の友人がいる精華大学を訪れた。中国トップのその大学にあったのが「次世代文化と娯楽協会」。日本の動漫を愛する学生が集うサークルである。メンバーは何と600人!このサークル、最初はプレステやドリキャスといった次世代ゲーム機(だから次世代文化だそうだ)の愛好会としてスタートしたが、現在では「漫画本の貸し出し、アニメ鑑賞会、ゲーム大会、創作を通した同人誌の発行」などを活動主旨としている。事情は違うだろうが、なにやら中国版「げんしけん」ではないか。
驚くのは、精華大学「げんしけん」のメンバーが揃って流暢な日本語をつかえるということである。日本の動漫がきっかけで日本語を外国語として選択したとのことだが、そのレベルは高く「ッつうか・・・」という日本の若者言葉もつかいこなせるほどだ(ひょっとして「KY」も通じるかも)。
そして、これらの学生の憧れの星が『スラムダンク』『セーラームーン』なのでである。
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