『中国動漫新人類』に見る中国動漫事情⑦〜アトムのせいで制作費が安くなった?
日本のアニメ制作費が安くなったのは、手塚治虫が『鉄腕アトム』を製作する際に敢えて安い金額をスポンサーに提示したからというのが現在の「定説」であるが、それに関して実は相応の支払いを受けていたという事実がアニメーター史家の津堅氏の本で明らかになっている(アニメビジネスがわかる本4津堅信之『アニメ作家としての手塚治虫』で書いたのでそちらをそちらを参考にして頂きたい)。
よく一緒にされるてしまうのでややこしくなるが、安かったのは制作費ではなく放映権料である。制作費に満たない放送局からの支払いを「制作費」と言ってしまうから誤解が生じるので、放映権料、あるいは出資と規定すればよいのである。
『鉄腕アトム』の実行制作費自体は決して安くはなかった。最近、辻真先さんが書かれた『ぼくたちのアニメ史』によるとアトムの脚本料はTBS系アニメ作品の倍であったとあるが、他のパートも東映動画から比べるてもかなりよかったのである。この厚遇がのちの虫プロ倒産の導線となっている部分はあろうが、虫プロが実際につかった制作費とテレビ局(代理店)から支払われる放映権料を明確に分けていれば誤解は生まれなかったであろう。
一方、中国ではなぜアトムが中国アニメの制作費が安くなった原因と見なされているのであろうか。中国のアニメ制作会社の説明によると、中国のテレビ局が支払う制作費(放映権料)が安いのは、『鉄腕アトム』のそれが安すぎたからであるというのだ。
では1980年当時、『鉄腕アトム』が中国に幾らで売られたかといえば、「再放映なしの、1本10万円」であったと松谷社長は述べている。そんな日本のアニメのことを中国側では文化侵略のために「対外ダンピング」したと言っているそうである。これに対し遠藤氏は悔しいの思いを抱いているようだが、決してそんなことはない。
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