『中国動漫新人類』に見る中国動漫事情⑧〜日本のアニメの相場
1963年にアトムがアメリカで放映されたときの放映権料は1本1万ドルであった。当時の為替レートは1ドル=360円である。その当時のアトムの実行制作費が250万円として、ドル換算で7,000ドル弱になるから制作費より高い。いまアトムをつくれば最低でも1,300万円はかかるとして、当時の1万ドルは2,000万前後といった感じであろうか。日本アニメ市場空前絶後の価格である。
1960年からはじまったハンナ・バーバラの大ヒットシリーズ『フリントストーン』の制作予算は1話52,000ドルであったから、さすがアメリカのネットワークアメリカである。そのためテレビ局は比較的初期の段階からアニメの制作は高くつくと思っていた。だからアトムの1万ドルという価格はNBCにとって魅力的に映ったはずである。
しかし、その後日本のアニメの値段が次第に下落していった。というか表現規制の問題などで売れなくなったのである。そのことを考えるとアトム(&ジャングル大帝など)のケースは結果的にビギナーズ・ラックで終わってしまった。一方、市場が異なるヨーロッパ、アジアではもちろんアメリカのようには行かなかった。
まして、まだ日本のアニメブランドが確立する以前の話である。それほど強い需要もなく、価格は先方の国の懐と相談してということになる。そんな中でもアジアは全体的に経済水準が低かったこともあり、1980年という時代に再放送なしで(実際には何度もオンエアーされたそうだが)中国に1本10万円ならば、当時の相場を考えてみても決して安くないはずである。
さらに、高度成長真っ只中にある現在の中国の10万円と28年前の10万円では相当価値も違うのではないだろうか。おそらく、10万というのは当時出せる精一杯の金額であったと思われる。その意味でも中国制作会社がアトムの販売価格をダンピングというのは当たっていない。
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