『中国動漫新人類』に見る中国動漫事情⑪〜国を挙げて推進されるアニメ事業
今まで中国における日本の動漫状況について述べてきたが、中国アニメの状況の方はどうなのであろう。これに関しては、現在中国では自国の動漫産業、特にアニメに関して大躍進を目指して大号令がかかっているという話をしばしば耳にする。
実際、私の身の回りでも最近中国のアニメ産業についての話を聞くことが多くなっている。上海や北京で開かれる動漫コンベンション、アニメに対する教育機関の激増、日本のアニメ企業に対する熱心な誘致など、ここ二、三年目に見えてそういったトピックが増えた。
『中国動漫新人類』に書かれてあるのだが、中国では国家がコスプレ大会を主催しているそうだ。遠藤氏によれば、中国の若者の日本動漫熱を押さえることは不可能と国家が認識し、自ら進んで主催するようになったとある。真意がどこにあるのかわからないが、まあ動漫産業振興の一環と見てよいであろう。
これらの現象の中でも驚くのはアニメ教育に対する情熱である。既に中国の大学・専門学校の75%(447の高等教育機関が動画専業の設置しており、その他の1,230の高等教育が何らかの形で動漫と関わるような学科を開設)がアニメ関連の学科を設置しているというから驚きだ。
この現象の裏には日本の動漫の蔓延に危機感を覚えた1996年の江沢民の一言があったという。自国の子ども文化に対する最高権力者の危惧がここまで動漫に対する教育熱を高めたのだと遠藤氏は推測しているが、日本のマンガ、アニメの躍進振りはそれほど凄かったということなのであろう。
ただし、実情を聞くと教える人材を含めまだ環境が整っているとは言い難い状況であるらしい。確かにアニメ産業が成熟しておらず、まだ確立されたビジネスモデルもない状況なので致し方ないのであろうが、その意気込みだけ伝わってくる。今後十年単位で見たとき果たしてどのような果実をつけるのであろうか。
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