『他力本願 仕事で負けない7つの力』押井守(幻冬舎1,600円税別)
『スカイクロラ』関連本その1〜57歳の回心?
『スカイクロラ』の公開に伴って押井守著の本が三冊ほど出版された。『他力本願 仕事で負けない7つの力』(幻冬舎)、『凡人として生きること』(幻冬舎新書)、『アニメはいかに夢を見るか』(岩波書店)であるが、なぜ一度のこれほどの自著が出たのであろうか。ムック本などの関連本ならいざ知らず、監督本人の書籍が一度に三冊も出版されるのは異例のことであろう。
このうち、『他力本願 仕事で負けない7つの力』(幻冬舎)、『凡人として生きること』(幻冬舎新書)は読売新聞の原田康久氏が構成・編集協力をしており、出版社も同じであることを考えると、おそらく一連のインタビューの内容を構成する中で二冊の本になったことが推測される。
この三冊には通底する押井守監督のメッセージがある。それは『スカイクロラ』に込められたメッセージそのものであるのだが、なぜ本来作品を通じて語るべきものをこのように出版という形で伝えようとしたのであろうか。三冊共に通底するテーマは同じである。メッセージを伝えたいと真摯に願う姿勢に押井監督の「回心」を感じたのであるが如何なものであろうか。
さて、『他力本願 仕事で負けない7つの力』は押井監督の制作メソッドの中心となるコンセプトを工程順にまとめたもので、「対話力」「妄想力」「構築力」「意識力」「提示力」「同胞力」「選択力」という形で提示している。なるほど、こういう考え抜かれた意識の持ち方が押井作品の根本をなしているのかと思った。
しかしながら、興味深かった押井守は実は後半部分の自叙伝であった。「「痛み」だらけの人生だった」と副題が打たれているが、申し訳ないがその「痛み」がなかなかの説得力を持って伝わってくるのである。この部分だけでも読む価値がある。
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