Vol.28〜第一部手塚治虫とマンガ〜第二章手塚治虫成功の秘密
手塚治虫を育てた文化〜漫画⑥〈海外漫画〉
戦前にまさか海外の漫画がと思うかも知れないが意外と広く紹介されている。既に昭和初期から海外の漫画が新聞に掲載されるようになっており、アメリカの大人気新聞連載漫画であるウィンザー・マッケイの『夢の国のニモ』も日本の新聞に転載されている。そういった海外漫画の中でも手塚も見ていた朝日グラフ連載の『ジグスとマギー 親爺教育』(ジョージ・マクナス作)は昭和5年に松竹歌劇団で舞台化されたほどの人気があった。しかし、手塚は更に家で購読していた革新的スタイルの雑誌「新青年」に掲載されていたミルト・グロスの『突喚居士』なども見ていたから、非常にませたマンガ少年であったことは間違いない。
このように戦前の子どもたちは豊かな「漫画」環境に置かれており、手塚が言うように「見ようと思えば本当に身の回りはマンガだらけ」というのもうなずけるであろう。特に恵まれた環境にあった手塚は、「ぼくのマンガには、昭和の初めから一種のマンガ史の影響が全部あるんですよ。手塚マンガは昭和のマンガ史のカルチャライズしとものといってもいいと思いますね」(『漫画の奥義』と語っているように、昭和初期の「漫画」文化を余すことなく取り込んだのである。
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