第二部手塚治虫とアニメ
2−2海外を席巻するアニメパワー
視聴率100%のアニメ?
ここで紹介するのは、海外における日本製アニメの活躍ぶりが伝えられるかなり以前に起こった「事件」で、日本製アニメの人気が過熱する余り放送禁止や規制といった社会的事件を引き起こしたケースである。その代表が“フランス文化侵略事件”であった。
時は1997年、当時フランスの国営放送は3チャンネルに分かれたばかりで極端なソフト不足に陥っていたため、公営放送のANTENNE2は翌1978年7月から「RECRE A2」という水曜の午後の子供番組枠で急遽東映動画(現東映アニメーション)製作の『ゴルドラック』(邦題『グレンダイザー』)や『キャンディ♥キャンディ』、『アルバトール』(放題『宇宙海賊キャプテンハーロック』)を買い付けて放映することにした。
それまでフランスでは、どこの国でもそうであるようにディズニーなどCartoon(マンガ映画=キッズアニメ)が主流で(彼らからすれば)世界の果てにある訳のわからない日本のアニメなど逼迫した事情でもなければ見向きもしなかったであろう。
だが、何の前ぶれもなく突然「極東」から現れたロボットアニメにフランスの子どもたちは驚愕、いや驚喜した。なぜなら『ゴルドラック』はそれまでのキッズアニメの常識を根底から覆すものであったからだ。
リアルな世界観、スピーディな展開、そしてバイオレンスといった要素をふんだんに持っていた『ゴルドラック』は、ディズニー風のアニメに見飽きていたフランスの少年たちの心をたちまちのうちに捉え、空前のブームを巻き起こす。その勢いは「視聴率100%」(多分世代視聴率であろう)といわれるほどで、時の大統領だったジスカールデスタン大統領の夫人が、「孫のためにゴルドラックの玩具が欲しい」と言ったという話がまことしやかにささやかれるほどであった。
さらに『ゴルドラック』に続いて放映された『キャンディ キャンディ』や『アルバトール』(邦題『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』)も大ヒットし、日本のアニメはフランスを初めとするヨーロッパ各国を席巻することになるのだが、その成功が余りに大きかったためその反動も尋常ではなかった。
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