『メイキング・オブ・ピクサー』(デイヴィッド・A・プライス/早川書房2,000円税別)
3Dアニメビジネスがよくわかる
これはアニメビジネスに興味を持つ人間の必読書であろう。長編3Dアニメの発端となったピクサーの歴史はそのままアニメビジネスの教科書となる。本書は初見のエピソードを含め3Dアニメに関する情報が満載である。
ディズニーが制作費用の3倍にも当たる一億ドルものプロモーション予算をかけて配給した『トイストーリー』で衝撃的なデビューを遂げたピクサーであるが、そこにたどり着くまで20年という時を経なければならなかった。ビジネスとして結実するまでにえらい時間がかかっている。
『トイストーリー』公開直前、ピクサーのオーナーであるスティーブ・ジョブスがサンフランシスコの名門ホテルでプレミアムショーを行った。上映後ステージに上がったのはジョブスだけで、その人柄を伺わせるエピソードではあるが、その裏には毎年赤字をたれ流し続けるピクサーをジョージ・ルーカスから買い取り10年に渡って支えたという自負があったからであろう。
興味深いのはピクサーの創設者であるエドウィン・キャットムルがCGの研究をはじめたのはユタ大学の存在である。本書にも書いてある通りそこは「歴史上、ときとして魔法にかけられたような場所、あらゆる確立法則を無視して才能が一極集中する場所」であったようだ。
キャットムルがCGを学んだユタ大学のコンピュータ・サイエンス学部には、アラン・ケイ、アドビのジョン・ワーノック、シリコン・グラフィックやネットスケープのジム・クラーク、アタリのノーラン・ブッシュネルなどが同時期にいたのである。キャットムルが彼らと違ったのは、10代の頃ディズニーのアニメーターになりたかったとあるように彼の絵心のせいかも知れないが、アニメーションを創りたいというクリエイティブ指向があったからであろう。
ディズニーは1980年代末からCAPS(Computer Animated Production Systemでコンピュータ上で彩色と撮影ができる)というアニメーションの制作工程をデジタル化するシステムに取り組んでいたことは知っていたが、この本でそれはピクサーが開発したものであったことがわかった。なるほどこの頃から既に密接な関係にあったのだ(東映アニメーションも70年代中盤から同様のシステムを開発し続けていたがピクサーの方に一日の長があったようだ。これによってアニメ業界は重くて厚いセルから解放された)。
インデペンダントのプロダクションとして存在意義を考えると、成り立ちは違うがピクサーは「アメリカのジブリ」とも言えた。しかし、株式公開を果たしディズニーの傘下に入った現在を考えると既に大きく方向性は違って来ている(「日本のピクサー」は何処へ行こうとしているのであろうか)。とにかく色々な意味で興味満載の本でありとにかく一読することをお勧めする。
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投稿情報: hikaku | 2009/05/16 20:20