『アニメ文化外交』その3(櫻井孝昌/ちくま新書760円税別)
ジブリが築いた300億市場を取りに行くのは?
アニメで音楽の興業に相当するもの、ズバリそれは劇場アニメ興業であろう。テレビ以前のアニメビジネスの原点とも言える形態であるが、この時期それが見直される価値はあるのではないだろうか。無料オンエアー、無料(違法)ダウンロード、違法パッケージというテレビアニメの現状では収益チャンスの介在が難しい。
一方、暗雲漂う日本に対しアメリカからは特に危ういという声は聞こえてこない。劇場が主流の彼の国では実際に夏休み向けに放たれたドリームワークスやピクサーの新作が好調である。
翻って日本はどうなのか。幸いジブリがマックス300億というオリジナル劇場アニメ市場があることを示してくれた。これに挑戦するのもひとつの手段ではないか。もちろん、テレビアニメから劇場アニメのブローアップという手堅い手段もあるがそれに耐えうる作品は少ない。また『グレンラガン』『東のエデン』では自ずから見る層が限られる。
ということで、ジブリに範を取りオリジナルでの挑戦ということになるが当然そのリスクは高い。だがしかし、アニメビジネスの現状を考えるとその分野への挑戦は欠かせないように思える。もちろん、それが出来る製作・制作企業は限られて来るであろうが雄々しく潜在市場の300億を取りに行くところが出てきて欲しいものである。
本当の意味で日本のアニメが世界一になるためには、世界中のBOX OFFICEで一位を取る作品が数多く出てこなくてはならないと思う。なぜなら世界一になるためには尊敬されることが必要だからである。その意味でテレビアニメで世界を制した日本のアニメに残された唯一の課題はトップクオリティの獲得なのである。
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