『マンガ進化論』中野晴行
(09年6月/P-Vine BOOKS/1,600円)
マンガビジネスの基本書
電子書籍販売「イーブックイニシャティブ・ジャパン」のメールマガジンで連載されていたものを電子書籍化し、さらに本にしたものである。出版社はブルーズ・インターアクションズ。 知らない名前なのでネットで調べてみて驚いた。何とかのブルーズ評論家である日暮泰文氏がつくった会社ではないか。現在はスペースシャワーの子会社になってしまったとのことであるが、ポップな写真集や音楽本の中で中野さんの本はハッキリ言って浮きまくっている(笑)。 http://bls-act.co.jp/news それはともかく、本書はアニメビジネスを学ぶにおいても必読書であるのは間違いないが、いきなり突っ込んでもいいでしょうか、中野さん。「アニメ・パチンコ市場など周辺の版権収入を加えるとマンガ市場の国内市場規模は約3兆円前後」とあるのですが、その内訳がありません。 マンガ業界ではマンガ雑誌・コミックの出版金額しか産業売上にカウントしない傾向があるので中野さんの指摘は非常に大切である。しかしながら、根拠がわかりません。そのこところ、ひとつ宜しくお願いします。 面白い指摘が随所にある。例えば、小学生までだったマンガを中学生が読む様になったのは何時頃か。また、日本のマンガ発展の背景には常に、メジャーとマイナーの二重構造があったなどである。 済みません、読み返しながら書いているのでもうひとつ突っ込み。109ページに「映画の原作に印税制が採用されたのは、つい最近のことだ」とあるが、これはどういう意味なんでしょうか?DVDパッケージならとっくに印税制になっているので、おそらく興行収入に連動する分配の事を言ってるんでしょうが、もしそうだったとしたら、中野さん、そりゃー無理ですって。ハリウッドだってそんな人はほとんどいませんもの(その替わり原作料そのものが高い)。 もうひとつ、マンガ家や出版社が「内容や設定が勝手に変えられても文句ひとつ言えなかった」とありますが、これはかなり昔の話ですよね。一橋、音羽とお付き合いがある人ならばわかると思いますが、勝手に内容を変えるなどトンでも八分、歩いて三分です(もしそうなら、とっくにバガボンドはアニメになってます)。原作者は翻案権に対する許諾権を持っており、著作人格権もあります。原作者が一言「ノー」と言えば一歩も前に進まないアニメも結構あったりするのです。 というのはさておきぜひ読む事をお勧めします。 (蛇足ながら・・・) 中野さん、マンガ総研はご自分でおやりになった方がいいと思いますよ。一番よくご存知なんですから。こちらはアニメ産業研究所みたいなのをやれればいいと思っているので、よかったら一緒にやりませんか。マンガ産業研究所とアニメ産業研究所、略してマン産とアニ産、もっと略してアニマンというのは・・・
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