企業ヒヤリング6〜Vol.4スタジオジブリ
【選定理由】
日本におけるアニメーション制作のトップ位置するスタジオ。日本のアニメーションを語る上で欠かせないスタジオであり、当然そこにおける人材教育についても興味が持たれる。アンケートでも人材育成がうまく行っている会社として3社からその名前が上がっていた。実際、「西ジブリ」を取ってもわかるようにヒヤリングでは期待に違わぬ新人育成を展開していた。
【企業概要】
1) 企業名:株式会社スタジオジブリ
2) 所在地:東京都小金井市
3) 設立:1985年6月
4) 代表者:星野康二
5) 資本金:1,000万円
6) 設立の経緯:『風の谷のナウシカ』の成功を受け1985年徳間書店の出資により設立。その後1999年に親会社の徳間書店に吸収されたが2005年傘下を離れて独立
7) 企業属性:元請企業。劇場アニメーションを中心に制作しているが、このビジネスモデルを持つのは日本で唯一ジブリだけである。その意味ではピクサーやドリームワークスといったハリウッド型の制作会社に近い。
8) 従業員:約300名(スタジオ約150名/美術館約150名)
【人材育成】
1)採用:
・ アニメーターについては不定期。昨年09年、今年10年と2年続けて採用したが、それ以前は5年ほど採用していなかった。
・ 昨年は1,000名を切るくらい、今年は570名ほどの応募があった。それと昨年デジタルペイントを募集したところ832名の応募があった。
2)募集方法:HP
3)昨年採用実績:アニメーター昨年09年22名、今年10年10名
4)人材の傾向:最近のアニメーター応募に特徴的なのは女性が多い事。それが採用の結果にも現れており、昨年は22名位中18名、今年は10名中9名が女性という結果になった
5)採用試験:
① 今までは、書類審査時に絵も提出し選考、続いて1日かけてレイアウト・作画(動画中割)のテストを行っていた。そこである程度選んで最終面接をして決めていた。
② しかし、西ジブリを作るに当たって、宮崎氏の「1日だけでは分からない」という考えから10日間の合宿試験に変更。絵を含む書類選考は既存通り、1次試験のレイアウトと中割で約50名をピックアップし合宿させて試験。
③ ちなみに合宿内容は、都内に宿を借りて受験者全員が共同生活をし、その宿から毎日朝9時にジブリに出社してもらい、夕方5時まで課題に沿って10日間かけて作業を行ってもらうという試験であった。
④絵の評価と勤務態度を見て採用を決めた。基準は作画の速さ、上手さもさることながら、個々の作業効率能力に重点を置いていた。具体的には先生のアドバイスを素直に聞き、理解し、実行に移せる能力があるかないかを見極めた。10日間の合宿試験では、これまでの1~2日間の試験・面接では分からなかったところが見えてくる形となり、アニメーション制作に適応したスタッフの採用ができたのではないかと思う(結果はこれからですが・・・)
6)給与:中小企業の初任給並み
7)研修ポリシー:
① 宮崎氏の提案で東京及び首都圏ではないところで人材育成をやろう、ということが前提であった。そこに、たまたまトヨタとの話があったというだけで豊田市に行ったのは偶然
② トヨタに対しては家賃を払っている。契約期間は2年。交通費なども含め人材育成費用は相当なものとなっている
8)研修内容
① 基本的に宮崎氏が考えた内容を実行している。担当は熱意持った先輩が教えるというスタイル。
② 豊田というか地方を研修の場に選んだのは東京や首都圏では人材育成に集中するのが難しいという判断から。(この意見は他のスタジオにもあり、東京は情報が多く集中出来ないので地方で制作を行った方がいいと数社が述べていた。)
③ 西ジブリに関する指導体制は研修生22名に対してアニメーターが5名、演助が1人、制作が1人。課題は西ジブリで美術館用短編アニメーションを1作品作ること。研修生が動画をやり切るというスタンスでやっている。研修期間は半年。問題なければ社員となる
今年の採用者の研修については西ジブリのキャパの問題もあり本社で行う予定
10)キャリアアップ:基本的にはない。その人間の習熟度次第。給与は基本的に年功序列
11)資格制度:必要とは思わない
【所見】
昨年、今年と合計32名の新人を採用したとの事。「採用試験」にあるように、手をかけた選考を行い、また恵まれた環境での長期間研修で育成される人材に期待したい。
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