企業ヒヤリング7〜Vol.5 白組
【選定理由】
2Dアニメ(セルアニメ)の新人育成を客観的に照射するための材料として3Dアニメの企業をインタビューした。セルアニメから出発し第一人者となった白組を調査することでどのような差異が生じているのかをうかがい知るのが目的である。
【企業概要】
1) 企業名:株式会社白組
2) 設立:1974年
3) 代表者:島村達雄
4) 資本金:445,000,000円
5) 設立の経緯:
東映動画の新規採用第一期生だった現代表が1974年にCFをメインとする制作会社としてスタート。80年代前半からCGに注目し日本のCG制作の魁となった。
6) 企業属性:
・ 元請会社。日本を代表するCG制作会社。CGアニメのみ実写、ゲーム、CFなど幅広く手がけている。本社を含め4つのスタジオを持つ日本最大のCGプロダクションであるがセルアニメ『もやしもん』の元請などもやっている(2Dアニメはテレコム・アニメーションが制作)。設立の経緯もあるが、CG技術よりも演出に重きを置くなどCGプロダクションとしてはセルアニメの伝統を色濃く残している。
・ 念のために代表作を記すと、アニメ「もやしもん」「うっかりペネロペ」、実写VFX「ALWAYS3丁目」「MW」、CF「シルバニアファミリー」、ゲーム映像「鬼武者」などがある。
7) 従業員:200名
【人材育成】
1) 採用傾向:不定期採用。以前は新卒が多かったが、プロジェクトが急にふくれあがって以降は即戦力が必要になって、転職組が増えた。
2) 募集方法:HPと学校に対する求人。
3) 昨年採用実績:撮影20名。
4) 人材の傾向:
CG専門学校か美術系大学出身者が多い。CMがメインの頃は美大の人が殆どだったが、CG制作が多くなってからは即戦力として専門学校出身者が増えた。人材としては技術面での一定水準のレベルは必要だが映像に対するセンスがある人が欲しい。
5) 採用試験:
・ まず作品見せて貰う。技術よりも作りたいというやる気が強い人間を採用したい。各チームのリーダーが技術的な面、プロデューサーが人間性を見る。情熱を見るのはプロデューサー的視点。やる気の無い人は面白くないし続かない。極端に言うと映像作りたいけれどピクサーを見てないといった人は基本的にダメ。ゲームのムービーは好きで見ているけれども映画は見ない、という人は何をモチベーションに映像を作っているのか疑問に思って採用しないという結論に至る。
・ 一番いいのは、黙っていても自分からクオリティアップを目指す人。会社としては時間内に仕上げるのは重要だが、向上心を持ってさらに上を目指して仕事が出来る人を採用したい。
6) 初任給:大卒と専門学校は違うが大体20万円くらい。
7) 研修ポリシー:特別な研修プログラム等はない。新人は人材を必要としている各プロジェクトに配属して実践でスキルを上げていく。
8) 研修内容:
技術的な事は作業の進行状況によってそのつど教える。基本的にCGは共同作業になるので各プロジェクトのチームリーダーの判断でその人のスキルに合わせた簡単なモデリングやテクスチャ作成などをやらせて、本人の適正も見ながら徐々に難易度の高い作業に移行させていく。
9) キャリアアップ:あとは仕事の中で各プロジェクトのプロデューサーが見て抜擢すると言う感じ。その抜擢は、普段アピールしている人を抜擢する感じ。
10) 資格制度:さほど意味を感じない。
【所見】
CG制作会社にはIT系流れを汲む会社が多いが、白組の場合はアニメーション作りから出発しているためか効率よりは情熱を重視するコンテンツ系の血を色濃く残しているように感じられた。それが、技術よりも演出的に優れた人間を採用したいという側面にも現れているのであろう。機会があれば自分たちが演出したフルCGアニメを制作したいと述べていたが、おそらく日本で一番ピクサーに近い存在が白組なのではないだろうかと感じた。
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