『アニメ・マンガで地域振興』(山村高淑/東京法令出版/2,400円)
ビジネスとしてのアニメツーリズム決定本
紹介が遅れてしまったが何とも丁寧な本が出た。具体的な事例から著作権の取り扱いまで実に親切。アニメツーリズムを実際に考えている人間はもちろんだがアニメビジネスを考える上でも欠かせない一冊である。
今までマンガやアニメによる色々な街づくり(結果としてそうなった場合も含めて)を見ると、最初に熱心な個人がいてその情熱が伝播する形となっている。何ごともそうだがまず核になる存在が必要であり、それが次第に広がって面白がる連中が出てくる。まさしく「連」の発想である。
以前、鷲宮町で『らき☆すた』を担当している方と会ったことがあるが、業界との差異がないと感じるほどのノリや感覚であった(そのままアニメ業界、グッズ業界に転籍できそうだった)。それまでの自治体の担当者の多くが、「お仕事」でやっている感を拭えなかったので実に新鮮であった。「なるほど、こういう人がやってたら広がるわな」、と思った次第である。
個人の情熱の究極の例をひとつ挙げると「よさこいソーラン」であろうか。これは高知県の先例を手本とする原作、キャラクターなしの徒手空拳からの出発であったが、高知でも北海道生まれでもない(名古屋生まれの)一人の人間の熱狂によって生み出された(日本人は古くは一世風靡、今ならエグザイルに連なるこういった群舞が好きですね。エグザイルもかなり土着化が進んできたので一遍太鼓で踊ってみたらどうですかね)。
著者の丁寧さが覗えるのは、作品への尊敬の念を再三に渡り説いていること。これは結構大切。お金も大事だがコンテンツ制作者が一番欲しいのは評価だったりする(一旦つくったら興味がなくなる人もいるが、大概は子どものようなものと思うので)。従って内容的な無理解(と言うか愛情がないこと)に対しては敏感である(それが金銭的評価の低さに繋がったりもするのだが)。
この本読んでその通りにやるとアニメ、マンガによる街興しが多分出来るであろう。もちろん、火の玉のような情熱(最初は周囲から迷惑がられるであろうが)を前提としてのことであるが、この分野にはまだまだ手つかずの部分があるのではないだろうか。
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