『アニメーション日中交流記』
(持永只仁/東方書店刊/2,500円)
(2006年8月)
ifがゆるされるなら
GW前から好例の杭州アニメーションフェアに参加することになっている。今年より会場が変わり、浙江省最大の不動産事業を中心とした中南GROUP本社の前の土地で行われると聞いているので、どのような展開になるのか楽しみである。
というようなこともあり、中国関連の書籍を読みはじめたのが持永さんの本。日本初の一コマ撮り人形アニメーションの創始者としてその名を残している。東京国際アニメフェアの功労賞でも第一回目の「特別功労賞 日本のアニメをつくった20人」に選ばれていることを考えても日本のアニメに対する貢献は限りなく大きい。
また、中国のアニメーションに与えた影響についても多大なるものがある。何せ、かの「上海美術映画製作所(上海美術電影製片廠)の設立メンバーなのである。戦後中国に残り成し遂げたこの功績は日中両国において大きな意味を持つ者であろう。
さて、歴史にifは禁物だが、持永さんの場合、二つの大きな分かれ道があったと思う。ひとつは終戦の年に満州行きを決めたこと。もうひとつは帰国後東映動画入りを誘われてそれを断ったこと。
もし、持永さんが満州に行かなければどうなっていたか。おそらくは日中交流における功績はなかったであろうが、日本においてかなりの業績を残せていたものと推測される。あるいは、東映動画の設立に関わっていたかも知れない。
さらに、後年中国から引き揚げてからの話であるが東映動画入りを誘われて断ったことも、今考えると非常に惜しかったのではないかと思われる。なぜなら、独立を貫き通した持永さんであるが、その後経済的事情でアニメをつくれない時期が結構あったからである。もし東映動画に入社していれば、相当の作品を残せていたことが考えられる。そうであれば、日本の人形アニメーションの状況は大きく変わっていた可能性がある。
何を言っても詮ないことであるが、この本を読むと時代の無常を感じざるを得ない。
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