(2012年5月/佐藤秀峰/PHP1,200円)
マンガ家が語る「マンガ経済」
帯に「出版業界関係者必読!!」とあるが確かにそうである。内容は筆者がマンガを描き始めた経緯から自身で電子コミック販売のwebを持つに至った経緯についてのものだが、マンガ業界及びマンガ家の経済を知る上での格好の参考書となる。
以前紹介した、アニメビジネスがわかる本242『アヴァール戦記』もそうだが、商業マンガ家はスタジオを構えアシスタント等を雇用して商業活動を営む事業者である。業態の規模は違うかも知れないがアニメの製作会社と同じものがある(製作会社=著作権保有者)。 この場合、テレビ局に当たるのが出版社となる。そこからの発注によって作品を制作し納品する。
そして、対価を受け取るのだが、佐藤氏や『アヴァール戦記』の中村氏が述べているように大概においてそれが制作費に見合わないものとなっている。何だかテレビアニメと同じ様な情況だ。
初期のテレビアニメにおいて放送局から支払われる対価(制作費、あるいは放映権料)が制作費に満たないケースが多かったため(もちろん、満額もらえる作品もある)、代理店が差額を補填、あるいは二次使用料(商品化)の配分を受けることで経営を成り立たせてきた。
しかし、それがある時から満額支払われるようになった。製作委員会ができたからである。ただし、委員会が著作権を保有するので実際に制作したスタジオに二次使用料の配分はなくなった。スタジオの立場からすると、この製作委員会システムの善し悪しはあるだろう。
翻って佐藤氏の場合はどうであろうか。問題はマンガ制作の対価が十分でないということだ。もし、コミックが出なかったら確実に赤字どころか「倒産」となるので、これはこれで深刻な問題である。
一方で、出版社は出版社でマンガ雑誌を維持するため赤字を出し続けているケースが多いという現実もある。コミックの売上を織り込み済みで雑誌を維持しているのであろうが、こちらはこちらで厳しい問題である。
マンガ雑誌がなくなればマンガ家の発表の場もなくなる。また、それは出版社やマンガ家だけの問題ではなく、そこから生まれる作品の恩恵を預かっているアニメ、テレビドラマ、映画、商品化といった業界全てに大きな影響を与える。問題の根は深いのである。
佐藤氏が杞憂する出版界の明日はテレビを中心とする日本のアニメ業界の明日の姿かも知れない。
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投稿情報: Anesaas | 2012/08/02 14:14