(2013年3月/小山昌宏・須川亜紀子編/新潮選書税別2,300円)①②③は当然の事として、重要なのは④と⑤である。研究書や評論からの情報だけではリエーターや作品の意図・実情は把握出来ない。「見ると聞くとでは大違い」というが、実際クリエーターに聞いて初めて分かることが実に多い。やはり直接本人や関係者に聞くなどの一時情報がなければ信憑性に欠けるのではないかと思う。
日本ではプロデューサーも含めアニメ関連の関係者の資料が少ない(ジブリ関係は非常に多いが)。もちろん、自伝をはじめとする書籍も少ない。小黒祐一朗氏のライフワークであるアニメージュのインタビュー(いつも一番最初に読む)やそれをまとめた書籍などはあるが、量としては実に少ない。
日本の場合、クリエーターご本人や関係者が存命しているので、なるべく直接会って話を聞いて文章を書いて欲しいものである(と言っても、宮崎監督に会える訳ではないだろうが。だが、『狂気と夢の王国』見て思ったのだが、本当に聞きたいことがあるのなら、ジブリと監督のアトリエの往復は歩いているようなので、待ち伏せてみたらどうか。まるで、週刊誌の突撃取材みたいだが)。
しかし、当事者だけからの情報でも不足である。なぜならば、当事者というのはしばしば記憶違いをするからだ(自分の作品を忘れているというケースもしばしば。何せ日本は多作である上に、才能のあるクリエーターに仕事が集中するので、大塚康生さんのようにマメにメモや日記を取っていない限り、自分の仕事を全部記憶するのは至難の業)。あるいは、自分に都合のいいように解釈する場合や、時にはウソをつくケースもある。単純な思い込みといったケースもあるので、必ず周囲から裏を取らなければならない。
文芸評論家の故平野謙の私小説に対するアプローチではないが、作品を読み解くためには作家個人を理解が絶対に必要である。第三者の研究書・評論等だけではなく、なるべく本人に当たり、その上で関係者にも当たって裏を取るべきだろう(まあ、実際こういうことが出来るのは、仕事として日常的にインタビューを行っている人間や、専門の研究者ということになるのであろうが)。この作業を意図的に行っているのは原口正宏さん位か。
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