例えば、『風立ちぬ』が最終的に120億の最終興行収入を上げたとしよう(10/6時点で114億円)。この内半分は劇場サイド、残った配給収入から配給手数料、宣伝費、VPFなどを支払うと、おそらく残るのは興行収入の30〜35%程度であろう。だが、これでは多分製作費も回収できないのではないか。
基本的にはワンラインしか走っていないのでジブリにおいては、作品製作費はイコール会社全体の維持費となる。要するに一作品で会社を維持していかなければならないのである。販管費について、東アニとジブリでは大きく異なるとは思うが、待遇がよいとされるジブリにおける人件費、及び年金や福利厚生はひょっとすると東アニを上回るレベルであることも想定される。
様々なインタビューで鈴木プロデューサーがいみじくも述べているように、宮崎作品であっても興行収入でプラスにはならなくなっているのである。ビデオや放映権でようやく黒字になるということは、今後の宮崎監督以外のジブリ作品で黒字化する可能性はほぼないという意味である。
これは会社存続の問題である。しかし、その結論がすでに見えてしまったのだ。このまま行くと言わずもがなの結論が待っているのだが、宮崎監督の引退はそれに対するシグナルであったのだと推論する(ご本人はそういう意識ではなかったかも知れないが、結果的にそのような位置づけとなるはず)。
東映動画の労組委員長であった宮崎監督は、現場で働く人間のための理想郷をジブリで実現した。今回の引退宣言は、そのことが傑出した才能があってこそ支えられて来たという事実を改めて浮き上がらせた。今回の宣言がカウントダウンのはじまりなのか、はたまた新生ジブリのスタートなのか。いずれにせよ、アフター宮崎以降のジブリに注目せざるを得ないのは確かである。
コメント