アニメビジネス勃興の時代
私がマッドハウスで働くようになったのは2000年からであるが、この時期アニメが国内外で注目され、ビジネス的に大きな波を形成しつつあった。第三次アニメブームともいえるこの波は、1995年の『エヴァンゲリオン』に端を発しており、1997年の『ポケモン』『もののけ姫』によって増幅され、2001年の『千と千尋の神隠し』で頂点を迎えたと見られたが、その後も『鋼の錬金術師』『ガンダムSEED』『ハウルの動く城』などのヒットが続くことで未だに続いている。
また、海外でも『Ghost in the Shell(攻殻機動隊)』『Ninja Scroll(獣兵衛忍風帖)』などのビデオが大ヒットし、1999年末にはポケモンの劇場一作目アメリカのBOX OFFICEで1位になって俄然日本のアニメが脚光を浴びた時期でもあり、海外との交流が本格化した時代であった。
アニメビジネスには、レコード会社入社以来経験した、音楽ビジネス、商品化権ビジネス、映像制作、編集、プランニングなどが役に立ったが、特に『うる星やつら』の商品企画や、1990年前後にアメリカとの合作アニメ『The Adventure of T-Rex』という作品のアシスタント・プロデューサーを務めた体験が大きかった。『うる星やつら』の件に関しては、今回の拙著『アニメビジネスがわかる』で述べているので割愛するが、『The Adventure of T-Rex』についてはビジネスを学ぶ上では非常に貴重な経験であった。
この『The Adventure of T-Rex』は全く同じ外見を持つ五匹のT-Rex兄弟が1920年代のニューヨークをモデルとした世界で活躍するアニメである。この作品の取組が画期的だったのは、日本のオリジナル・キャラクターを原作としたアニメがアメリカで実際にオン・エアーされたということであろう。独立系の放送局をネットしたシンジュケーション・ネットワークで全米エリアの80%以上をカバー、その意味では日本の原作がハリウッドで製作され(正確にいうと日米共同製作)、全米でオンエアーされたという初のケースであったと思う。残念ながら視聴率が取れなかったこともあり、その後のビジネスにつながらなかったが、もし成功していたら日本のアニメ・キャラクタービジネスの促進が早まっていたであろう。
この『The Adventure of T-Rex』に関しては一度や二度で語りきれないほどのエピソードがあるので、詳述はまたの機会に譲りたい。
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