青崎智行・(財)デジタルコンテンツ協会編著『コンテンツビジネス in 中国』
(07年/翔泳社/1,800円+税)
中国コンテンツ市場が一望出来る
最近中国関係の話を聞く機会が多いせいもあって、なかなか興味深く読めた。また、この種の本は編集がしっかりしていないと断片的な寄せ集め情報に終始してしまうが、この本の場合現状の中国のメディア・コンテンツの状況をうまく浮かび上がらせており、全体の把握がしっかりできる出来る内容になっている。
アニメに関する興味でいえば、特に現在上海でCGアニメビジネス制作を手がけている濱田功氏の第一章「栄光の復活に賭けるアニメーション産業」がその実体を鋭く捉えていて秀逸である。また、日本の版権元が中国で商標登録をしようとしたら現地企業が先に申請しており、本家が違法になったことが事件になった『クレヨンしんちゃん』の中国展開の実情がわかる第五章の「『クレヨンしんちゃん』の冒険」も興味深く読めた(執筆は『クレヨンしんちゃん』の版権管理を担当している双葉社の中野正史氏)。放送や音楽に関する事情にも詳しく、中国の市場に興味のある人間にはお勧めの一冊だ。
さて、その中国の状況だが、市場として潜在的な可能性を否定期出来ないものの、現状ではまだまだクリアーすべき問題が多いように思える。中国のマンガ・アニメコンベンションに請われて日本のアニメ製作企業が出展した時、同じ会場にその企業が持つキャラクターの海賊版をつくっている現地企業が出展していたという話もあり、その意味では日本のコンテンツ産業が本格的に参入するのはまだ時間がかかるものと思われる。
現在中国では国を挙げてマンガ・アニメ製作振興を行っている。全国の大学の至る所にマンガ・アニメ学科が誕生し、その数は四〇〇以上であると言われている。中国には映画人材育成を対象とした中国電影学院(北京)という名門大学があり、張芸謀(チャン・イーモウ)、陳凱歌(チェン・カイコー)、田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)といった著名監督、趙薇(ヴィッキー・チャオ)や徐静蕾(シュー・ジンレイ)ら人気俳優を輩出している実績がある。また、韓国でも一〇年以上前からコンテンツ製作の人材育成に本格的に力を入れ相応の実績を上げている。それらのことを考えると、現在中国が国を挙げて行おうとしているマンガ・アニメ製作の人材育成が今後どうなるのかが注目されるところである。
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