チャップリン格安DVD差し止め〜『ローマの休日』は売られているが
昨日(8/29)チャップリンの『モダン・タイムス』『独裁者』『殺人狂時代』など1919年から52年に公開された映画を販売している都内のDVD制作会社に東京地裁から差し止めの判決が下った。訴えたのはチャップリンの映画著作権を管理しているリヒテンシュタイン公国にあるロイ・エクスポート・カンパニー・エスタブリッシュである。
ここで想い出されるのは昨年東京地裁で『シェーン』や『ローマの休日』のDVD販売が認められた件である。訴えたのはパラマウントなどアメリカのスタジオ。両件共に著作権者の許諾なしにDVD販売を行ったことに対する訴訟であり、保護期間を巡る争いであった。
誰でも不思議に思うのはなぜチャップリンの作品が認められ『ローマの休日』がダメなのかという点にある。しかも『ローマの休日』はチャップリン作品よりあとに公開されているにもかかわらずである(1953年/昭和28年公開)。
ポイントは適用法律の解釈の違いにある。『ローマの休日』は公開後50年で著作権が切れるという解釈を取り(現在は70年)、チャップリンは著作権者である監督の死後38年という解釈を取った(チャップリンは1977年死亡)。共に作品が製作・公開された当時の旧著作権法による解釈である(新著作権法では監督は著作権者ではない)。
前者の解釈を取り入れると両方の作品がパブリック・ドメイン(著作権切れ)となり、後者の解釈を適用すると『ローマの休日』も救済され(監督のウィリアム・ワイラーは1981年死亡)監督の死亡年が計算起点となる。そうなればパブリック・ドメイン作品の地図も変わる。いずれにせよ平仄は合わせなければ無用の混乱が生じるのは間違いない。
アメリカではこのような「隙間問題」は生じない。映画が生まれた時からその著作権は製作者(スタジオ、あるいはプロデューサー)にあるのが常識だからだ。従って公開年数が起点となる。アメリカでは1928年公開のディズニー作品『蒸気船ウィリー』に合わせて保護期間が度々延長されていると言われており、現在では95年となっている。
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