エドワード・J・エプスタイン/塩谷紘著『ビッグ・ピクチャー』
(06年/早川書房/2,700円)
ハリウッドメジャーの本質
今まで知り得なかったハリウッドの本質とうたってあるが正しくその通りの本である。
1980年年代バブル真っ盛りの時、日本から多くの企業がハリウッドを目指し辛酸を舐めた。松下のユニバーサル売却などほとんどが高い授業料を払う結果に終わったが、結局奥の院までたどり着き宝を手にしたのはソニーだけであろう。
その頃日本からの出資でハリウッド映画を製作したことのある先輩プロデューサーから伺った話であるがメジャー会社との配給契約は何遍読み返しても意味がわからないという。字面としてはわかるのだが、それが現実的に実行されるとどうなるのか想像できない。
その通りである。そもそもわからないようにできているのである。そもそも契約書が意味することを最初からわかっていたら誰も取引しなであろう。彼らとつきあえるのはそれに耐えられるか、あるいは対抗できるパワーを持つものしかいない。
本書はそんなハリウッドビジネスの裏側を初めて描いた作品である。そのシステムが数字と共に解説されている。それを見れば真正面から行ってもビジネスにならないことがわかる。
アメリカにおける日本のアニメビジネスはどうであろうか。テレビの世界では次第にビジネスモデルを見つけつつあるが映画に関しては決定的に弱い(日本映画そのものが弱くアニメはその中で見当はしているのだが)。最初の劇場版ポケモンこそBOX OFFICE1位の快挙を成し遂げたが2作目以降は回を重ねるごとに半減、『千と千尋の神隠し』(Spired Away)でさえ興収1,000万ドル(12億)足らずである。
日本のアニメビジネスが本当の意味でグローバルになるにはアメリカで劇場アニメを成功させることである(実写も同じだが)。アメリカは映画の国である。その国で日本の劇場アニメが浸透できれば名実共に世界一になれる(もっともその時には確実に排除されると思うが)。
海外進出を目指すビジネスマンなら必読の書であるが、同時のその壁の高さにため息が出る本である。
この他に実際の体験を踏まえたハリウッド解説本としては、アメリカでエンタティンメント・ロイヤーとしての経験を積んだミドリ・モールの『ハリウッド・ビジネス』(文春選書)、実際にハリウッドで映画を製作した一ノ瀬重隆『ハリウッドで勝て!』が参考になる。
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