岡本薫『著作権の考え方』
(岩波新書/740円税別)
アニメも含むコンテンツビジネスの要諦は著作権にある。従ってコンテンツビジネスを目指すものにとって著作権の知識は欠かせない。この本は私が読んだ著作権関係の本で一番面白く一番安かったのでお勧めしたい。
著作権を解説する書籍は多いが専門書以外ではそれほど見当たらない。そんな中で基礎知識を学ぶのに打ってつけなのが本書である。著者は文化庁著作権課課長で現在政策研究大学院大学教授の岡本薫氏である。
本書で面白かったのが著作権法に対する著者の考え方である。「宿命的な対立構造」にある権利者側と利用者が自己の欲求を追求する限り、著作権法は常に不満の対象で在り続ける。というか、両者が満足する著作権法など理論的に有り得ない。ところが、日本はとかくお上頼みになりがちで法律に解決を求めようとする傾向があると著者は指摘する。
実はこれがコンテンツの流通を妨げている理由のひとつでもあるのだ。著作権法的には実は日本の方がアメリカよりもきめ細かい。しかし、実際はアメリカの方が日本よりもコンテンツの流通がスムーズである。これはプロデューサー(製作者)がお上(法律)に頼らず交渉によってオールライツで権利をクリアーしているからだ。
日本の場合、どんな音楽でもテレビ番組内でつかえる(例えビートルズでも)。再放送も自由だ。ところが一旦放送以外(DVD化やネット配信)に利用しようとすると音楽や俳優の再許諾が必要となり全てがフリーズしてしまう。著作権法上の利便性があだとなっているのである。
ただし、映像コンテンツに関する本格的な著作権知識については本書でもまだ不足である。本格的に書かれたものはないので時代の要請も強いことであるし早期の出版が望まれる。
本当に著作権実務が学びたいのなら併せてサーティファイがやっている「ビジネス著作権検定」を受けるといい。著作権を学ぶきっかけになる。
http://www.sikaku.info/
来年の国会で現行の著作権法がかなり改訂されるという情報がある。スムーズなコンテンツ流通のためであろうがまだ道筋は見えない。
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