河内孝『新聞社〜破綻したビジネスモデル』
(07年/新潮選書/700円税別)
3年ほど前からある大学の講師をしているが、最初に学生に対して行ったアンケートでショックを受けたのは新聞を余り読まないという事実だった。それどころか雑誌も読まない学生も多く活字離れという言葉を実感した次第であった。
私が現在顧問を務めているフロントメディアはIT系企業で若者が多いがやはり新聞を読んでいる人間は少ない。そもそも社長からして読んでいない。彼らの情報源はPCでありケータイである。そんな状況を考えるとあと10年もすれば新聞を読む若い人間が消滅してしまうのではないかと思ってしまう。
新聞がペーパーレスになれば環境資源的にもいいだろうが長年新聞を読み続けてきた人間としては淋しい。またこういう状況が進むとマンガ雑誌もいずれペーパーレス化してしまうのではなどと思ってしまう。
本書の著者は毎日新聞のOBでやはり同様の懸念を抱いている。実際それは新聞の販売部数や広告売上にも現れている。しかし、それでも新聞社に危機感が見られないのは「新聞は衰退するかもしれないが、当分はテレビで食える」と考えているからであると著者は指摘する。確かにテレビ局の親会社はほとんど新聞社であり日本メディアの特殊な有り様が伺える。
この本を読んで知ったのは新聞とは何と営業コストがかかるものかということである。宅配、拡販を維持するためのコスト、つまり流通経費が異常に大きい。そういう意味では流通コスト削減がテーマであるデジタルメディアの真逆を行く。
本書は現在新聞が置かれた立場を余すところなく伝えているが『電波利権』(新潮選書)と併せて読めば日本のメディアの現状と問題点がほぼ把握できる。さらに『メディアの支配者上・下』(講談社)まで読み進めると日本のマスコミの有り様を象徴するフジサンケイグループを舞台裏を理解できる。
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