小田切博『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』
(07年/NTT出版/2,500円税別)
この一冊でアメコミの現在がわかる
前回はアメリカにおける日本のマンガの状況がよくわかる本『萌えるアメリカ』を紹介したが、今回はアメコミの状況がよくわかる本である。というか大変な情報量である。
今までアメコミ事情というと小野耕世氏などによる紹介などしかなかったが、この著書は現在のアメリカコミック事情を余すことなく伝えていると言えるだろう。
とにかく情報量が凄まじい。それも最新のものばかりである。アメコミというとすぐ『スーパーマン』や『バットマン』などのヒーローものという印象が強いが、これを読むと実に多様なコミックが存在するということがわかる。
興味深いのは日本のマンガとの関係である。日本のマンガとコミックが現在どのような関係にあるのかビビッドに描かれている。
さらに面白いのは9・11がコミックに与えた影響である。タイトルの戦争とは主に9・11のことを指しており、これがどのようにコミック・ライターに深刻な影響を与えたのかが豊富な実例によって証言されている。その意味で現代アメリカの優れた文明批評にもなっている。
なお、現在発売中の『月刊PEN』(8/15号)に「世界のコミック大研究。」をテーマに世界のコミック事情が書かれていたので併せて読んでみるとよい。
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