海外における放映事情4〜アジアでもあった日本製アニメ放送規制
大統領自ら放送禁止を宣言
フランスで起こった日本製アニメの「侵略」はヨーロッパに限ったことではなく、アジアでは大統領自ら日本製アニメの放送中止を国民に訴えた国があった。
1979年8月、当時フィリピンの大統領だったマルコスが、突然『ボルテスV』(製作:東映/アニメ制作:日本サンライズ)の放送中止を宣言した。わざわざ大統領自ら国民に、しかもアニメ番組の放送中止を訴えたその事情の裏側には何があったのか?
1978年、フィリピン国営放送で毎週金曜午後6時から放映が開始された『ボルテスV』は、瞬く間に子どもたちの人気をさらい、最高視聴率58%という驚異的な数字を記録するまでになった。そのため、巷には関連商品が溢れ子どもたちはそのとりこになった。
しかし、フランスでもそうであったように、子どもたちの関心とは裏腹に、親や教師は「内容が暴力的すぎる。成長期の子どもに悪影響を与える番組だ」と心配した。フィリピンもフランス同様カソリック圏で日本人が考える以上道徳的規範は厳しい。そこに目をつけたのがマルコス大統領であった。
当時続々と参入してくる日本資本に対して、密かに芽生えつつあった反日感情を利用することで、戒厳令下という緊迫した政治事情下にくすぶる国民の不満を逸らそうとマルコスは考えたと言われている。そこで狙われたのが大人気の『ボルテスV』だったのである。大統領はアニメを日本資本の先兵になぞらえ、排除することで国民の眼を政府から遠ざけようとしたと伝えられている。
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