アニメ右肩上がりの要因2〜メディアの発展による牽引効果
2.2ビデオによる牽引効果②〜リスクが軽減されたビデオビジネス
ところが1970年代からビデオの登場でアニメビジネスの収益構造は一変した。ビデオ・LD販売という新たな収益源の出現によりアニメのビジネスモデルが画期的な変化を迎えたのである。
ビデオ・LDは子ども向けの食品や玩具などよりは遙かに高価である(1980年代は1万円以上した!)そのため収益率が高く商品化権メインのアニメビジネスのように数百万人ではなく、数万人対象の特定マーケットで成立するビジネスが生まれたのである。そのためスケールを追求する必要がなくなり、自然とリスクが軽減された。
このビデオ・LD中心のビジネスモデルは、商品化権中心のアニメに比べて次のようなビジネス的特徴を持っている。
① 〈メディア提供コストが少なくて済む〉=ビデオグラムタイプのアニメビジネスは数万人が対象であるためゴールデンタイムなどの高価な枠でオンエアーする必要がない(時にはOVAで十分な場合もある)。従ってオンエアーコストが画期的に低減した。
② 〈製作話数が少なくて済む〉=商品化権メインのアニメビジネスのように、キャラクター認知のために長期間に渡るオンエアー(最低1年)を必要としないので製作話数が少なくてすむ(大概13話から26話)。そのため(映像に重きをおくため制作単価は高くなる傾向はあるものの)総体的に製作コストが減った。
③ 〈人的コストが少なくて済む〉=商品化権メインのアニメビジネスはアニメ製作に伴い多くの人力を必要とする。商品開発販売会社、スポンサー、TV局、代理店、原作者(出版社)、制作会社、ライセンシーなどとの連携のために相応の人的、時間的資源を必要とする。ところがビデオグラム中心のビジネスモデルでは、極端な話OVAであれば制作会社とビデオメーカーだけでビジネス構築できるので人的コストがかからない。
要するにビデオグラムの登場により、アニメビジネスのロー・コスト化がはかられリスクが低くなったのである。そのため1980年代からビデオメーカーを中心とした新規プレーヤーの参入が相次ぎ、アニメ製作にはずみがついたのであった。
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