アニメ右肩上がりの要因2〜メディアの発展による牽引効果
2.2ビデオによる牽引効果①〜ビデオの登場とアニメのビジネスモデル
アニメとメディアの関係においてテレビに次いでエポックメイキングだったのは、ビデオという録画メディアが登場したことであろう。ヤマトによって顕在化した青年ファン層に支えられていた1980年代の第二次アニメブームであるが、そのマーケットはビデオの普及があったことは見逃せない。
『宇宙戦艦ヤマト』以前のアニメビジネスは、1920年代のフェリックスにはじまり、1930年代にミッキー・マウスを擁したディズニーが確立したキャラクター・ライセンス中心の収益構造を基本としていた。もちろん、映画興業やテレビへの番組販売も大きな柱ではあるが、一発当たれば上限のない(かつキャラクターが定番化すれば安定した)収入をもたらすマーチャンダイジングは魅力的である。
ところが、このキャラクター・ライセンス・タイプ(商品化権タイプ)のアニメビジネスはリスクが大きい。それはなぜか。このタイプのアニメビジネスにおいてその収益の柱となるのは、食品やグッズから得られるライセンス・ロイヤリティであるが、その対象となるのは原則子どもであるため単価の設定が限られてくる。そのため非常に多くの購買者を必要とするのであるが、それに伴い以下のビジネスリスクが発生する。
① 単価が安い商品を大量に買ってもらうためには多くの子どもたちに見てもらう必要がある。そのためには、子どもが視聴する可能性が高いゴールデンタイム枠や土日の午前中での放映が不可欠となるが、その時間帯の提供料金は極めて高価である。
② 子どもたちにキャラクターを認知させるには時間がかかるので最低1年間単位(50話前後)で放映が必要。当然製作費がかさむ
ところが、それだけコストをかけても番組がヒットする保証はどこにもない。たとえ原作マンガやゲームが100万部/本売れていようが当たる確証はない。事実、1年を超えて継続できるアニメ作品は非常に少ない。翌年まで繰り越せるのは平均3〜4作、そこからさらに続くのは年1作もない(子ども向けの番組枠が少なくなった現在、番組の交替=新作の登場の機会が少なくなり流動性が低下する傾向にある)。このように商品化権収益メインのアニメビジネスはハイリスク・ハイリターンであり、ビデオ登場以前は新規事業者の参入が極めて難しかった。
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