アニメ右肩上がりの要因2〜メディアの発展による牽引効果
2.1テレビによる牽引効果④〜『鉄腕アトム』によって築かれた日本のアニメの黄金時代
テレビ放映がはじまってちょうど10年後の1963年、遂に日本初のテレビアニメシリーズ『鉄腕アトム』がはじまった。それまで不可能と思われていたTVアニメを実現させたこの作品は、日本のアニメ産業にとって限りなく大きな意味を持つことになる。
当初『鉄腕アトム』の作品的な評価については厳しいものがあった。その当時東映動画のアニメーターであった大塚康生は、「一人として技術的に評価する人はいませんでした。極論すると『あれじゃ誰も見ない』と思うほどのぎこちない動かし方」(『作画汗まみれ』/徳間書店)であったと述べている。要するに「TV紙芝居」ということである。
ところが、子どもたちの反応は違った。たとえ「紙芝居アニメ」であっても十分熱狂するに値したのである。月に一度雑誌でしか見られなかったアトムが週一度、しかも動いている姿を見ることができる。それだけでも子どもにとっては誠に幸福な出来事であったのである。
余談であるが、私は小学生の頃、『鉄腕アトム』が連載されている光文社の「少年」を定期購読していた。『鉄腕アトム』のエピソード中、一番人気は「史上最大のロボット」(浦沢尚樹氏の『PLUTO』の原作です)だったそうだが、ご多分に漏れず私もこのエピソードに熱狂した。ところが、「少年」は月刊誌であるため、読み終えると次の号まで一ヶ月待たなければならない。読み終えた途端にカウントダウンがはじまる。これが実に長いのである。待ち遠しくて、発売直前になると気もそぞろになる。そのことを考えると毎週アトムが見られるなんて、当時の子どもにとって夢のような話であったのだ。
子どもたちの熱狂的な支持によってアトムは平均視聴率27.4%、最高視聴率は40.3%に達する大ヒット番組となり、現在で言えばポケモンブームのような一種の社会現象にまでなった。そしてキャラクター玩具や食品は飛ぶように売れ、製作費を補って余りある莫大な商品化権収入を得ることになったのである。
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