問題作『ベオウルフ』③〜「パフォーマンス・キャプチャー」の利点
『ポーラ・エキスプレス』におけるゼメキスの試みは、北米BOX OFFICE(IMAXシアターでの再上映を含む)$177,453,479、海外$124,100,000、合計$301,553,479の興行収入を上げることでビジネスとしての継続性を勝ち得た。そこで企画されたのが『ベオウルフ』である。
その技術の格となる「パフォーマンス・キャプチャー」であるが、一見すると何やら回りくどく、通常のモーション・キャプチャーや実写ものよりも確実にコストがかかりそうであるが、有利と思われる点も幾つかある。以下は私の推測であるが、思いつくままポイントを記してみる(内実を知らないので、逆の場合もあると思うが)。
〈パフォーマンス・キャプチャーのメリット〉
1) 有名俳優のキャラクターをそのままつかえるので、キャラクター造形の手間が省ける(キャラ・デザインコスト)
2) 個性のある役者の動きを取り込めるので、演技(animate)造形の手間が省ける(animateコスト)
3) 実写ではないので契約やユニオンの拘束を受けず、キャラクターの肉体や動きを誇張できる(演出メリット)
4) ロケがなく、さらにスタジオでも照明のセッティングや衣装をつけることがないので、撮影が早い。おそらく二ヶ月程度で全てシューティングが終わっている(シューティング・コスト)
5) ロケがないこともあり、事故などのリスクが減る(保険も安いのでは?)
6) これも勝手な推測だが、俳優の拘束期間も少ないのでギャラが安いのではないか(演技コスト)
以上であるが、このようなメリットがあっても果たして全体の作業工程における費用対効果的に見て果たしてどうなのであろう。非常に興味深い部分である。このような新しい試みは作品を積み重ねるごとにコストが下がるのが常ではあるが、結局の所、エンタティンメント作品の宿命として、客が入るかどうかが存続の決め手になる。
『ベオウルフ』は現在の所、北米BOX OFFICE$80,046,402、海外$100,000,000、合計$180,046,402という成績である。最終的には2億ドルを超えるであろうが、『ポーラ・エキスプレス』には及ばないのは確実である。製作費公称1億5000万ドルの作品としては採算的に苦しいところであろう。アニメでもない実写でもない、この新しい方法が今後継続出来るかどうかはビジネス的な成否にかかっている。
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