3Dでも2Dでもない日本が歩む道〜『ハム太郎は〜い!』の場合
ベオウルフ』について長々述べたが、デジタル技術に対する日米の違いを端的に表している例として『ハム太郎は〜い!』がある。
現在テレビ東京系列で放映中の『ハム太郎は〜い!』(5分番組)であるが、手描きのセルアニメかと思っていたところ、実は「完全フル3Dアニメ」であった。いや、正確に言うと「3Dアニメ制作ツールをつかってつくられた2Dタッチのアニメ」と言うべきか。見かけは全く普通のセルアニメである。ところが制作工程は完全にデジタル化されているのである。
(http://www.hamutaro.com/anime/timetable/index.html)
手描きのように見えるキャラクターや背景の造形には、3Dアニメ制作ツールのスタンダードになりつつある3ds Maxをつかい、それにpencil+で輪郭線をつけ、さらに2Dアニメタッチに「落とす」。Animateにはアフター・エフェクトをつかうので平面的、直線的な動きとなる。3Dアニメ制作ツールを駆使しながら、如何にアナログタッチに見せようとするところが何とも日本らしい。
以前の30分シリーズはトムスが制作していたが、現在の『ハム太郎は〜い!』を制作しているのは小学館デジタル&ミュージックエンタティンメントである。完全なデジタル映像指向で、このような制作手法はおそらくトムスでは思いつかなかったであろう。また5分という尺がそれを可能にした
アメリカ産の3ds Maxがベタベタの2Dタッチのアニメ制作につかわれるとは、おそらく開発側は思っていなかったのではないだろうか。多分アメリカには3Dアニメ制作ツールをつかって、わざわざベタベタの2Dタッチのアニメを制作するという発想はないのではなかと思う(アートアニメは別であろうが)。
日本はそのツールの大本のコンセプトを考えずに道具としてつかう傾向がある。「なんのためにつかうのではなく、どうやってつかうか」というレベルにいきなり落ちてくる。アメリカはその表現特性を生かそうとして、とことん追求するが、日本は制作工程における便利なツール、生産性を上げるためのツールとしてつかわれる傾向が強い。
それが結局『ベオウルフ』と『ハム太郎』の差ではないかと思う。結局3Dアニメをどのように捉えるかということになるのであろうが、日本は確実に2・5Dアニメの道を歩みつつあるように思える。
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