問題作『ベオウルフ』⑤〜アカデミー賞ノミネートなるか?
『ベオウルフ』についてあれこれ書いたが今回が最後である。ついでに一言注意申し上げておくが、もしお正月などにこの作品を3-D立体映像の小屋で見ようと思っている方がいたとしたら、小さな子どもは連れて行かない方がいいだろう。うなされる危険性がある。カップルの場合、思わず女性に飛びつかれるという僥倖に恵まれる可能性もあるが、どうしてこんな映画に連れてきたとのと言われるリスクもなくはない。
閑話休題。
アニメか否か頭を悩ませるこの作品にハリウッドも相当迷ったようだ。先達のアニメ人から見ればモーション・キャプチャーの評価自体低いのは当然であろうが、『ベオウルフ』は〈資格審査〉の結果、アカデミー賞長編アニメーション部門のノミネート候補に何とか残った。興行価値は別として、ハリウッドにおいても『ベオウルフ』の定義づけは難しいようである。
長編アニメーション部門にノミネートされる際の条件は、長さ70分以上、主要キャラクター以下がアニメーションでつくられていなければならず、その動きや演技はコマ撮りが必須。また、アニメーションの部分が映画全体の最低でも75%を占めることとある。『ベオウルフ』は、「パフォーマンス・キャプチャー」に対する評価を巡っての〈資格審査〉議論があったと推定される。
今回、アカデミー賞にエントリーしたのは、『ベオウルフ』の他、『ザ・シンプソンズ MOVIE』『アルビンとチップマンクス/狼男にご用心!』『レミーのおいしいレストラン』『ルイスと未来泥棒』『サーフズ・アップ』『ミュータント・タートルズ ‐TMNT‐』『シュレック3』『ビー・ムービー』『Aqua Teen Hunger Force Colon Movie Film for Theaters』『鉄コン筋クリート』などである。この内、実写との合成である『アルビンとチップマンクス/狼男にご用心!』は失格した。
その年のアニメ作品が16作以上であればノミネートは5作、15作以下であれば3作となる。今年は15作品以下なので1月末に決まる正式ノミネートは3つとなる。『レミーのおいしいレストラン』『シュレック3』は固い線だと思うが、もうひとつは実績で言えば『ザ・シンプソンズ MOVIE』であろうか。革新的な『ベオウルフ』のノミネートが果たしてあるかどうか。
『ベオウルフ』が提示した問題はそのまま日本のアニメに対する問いかけでもある。今後どのような評価が下されるのか注目して行きたい。
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