アニメ右肩上がりの要因4〜収益構造の多様化による牽引効果
収益構造の多様化④〜テレビの登場
収益構造の多様化はウィンドウのそれとも直結している。ウィンドウが増える度に収益源が増えるが、テレビもアニメにとっては新しい収益源となった。
原則的に放送局からの製作費・制作費でまかなわれているテレビ番組であるが、アニメだけは最初から特殊であった。つまりテレビ局(スポンサー)から製作・制作費が全額出ないのである。こうなったのは手塚治虫が『鉄腕アトム』をつくるときに、製作実費よりかなり低い金額を自らスポンサーに申し出たからというのが通説になっている(このへんの事情は津堅『アニメ作家としての手塚治虫』に詳しいので是非一読して欲しい)。安く製作することで他者の追随を許さないというのが手塚の考えだったというが、その差額は当時マンガ部門の長者番付トップの常連だった自分のポケットマネーから出すつもりであった。
手塚治虫のこの決断によって日本のテレビアニメは実製作・制作費とテレビ局(スポンサー)から支払われる製作・制作費(放映権料)が乖離するという事態になった。そのためアニメ制作の現場が低予算・ハードスケジュールに苦しむ結果になったが、同時に作品の著作権は製作会社がキープできることになった。
このようにテレビアニメは最初から放送だけに頼る構造ではなかったのである。現在深夜で放送されているアニメに関しては放送による対価をほとんど生じていない。要するに持込である。テレビというメディアで収益を上げるというよりは、DVDを売るためのプロモーショナルなウィンドウと考えられているからである。
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