『中国動漫新人類』に見る中国動漫事情1〜中国における日本のマンガ、アニメの実態がわかる『中国動漫新人類』
既にご存じの方も多いであろうが日経BP社から先月発刊された遠藤誉氏の『中国動漫新人類』が面白い。この作品は日経のNBオンラインで連載されているもので、まず読まれることをお勧めする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070907/134326/
この書は、今までなかなか伺い知ることができなかった中国での動漫(アニメとマンガ)の実態に触れていて誠に興味深い。中国の動漫、また若者の事情を知りたい人間にとっては必読の書である(ただし、あらかじめお断りしておくが、本書の後半は動漫よりも中国の政治体制、日中関係などについて多く割かれており、動漫と直接関係ない部分も結構あることを伝えておきたい)。本日から、この遠藤氏の本を中心に中国の動漫事情について考えて行きたい。
中国日本のマンガやアニメに人気があるとは聞いていたが、今までその実態を知る手だてがなかった。何故かといえば、中国では数字的な把握が困難であるからだ。通常、海外におけるアニメ人気のバロメーターは(国内でも同じだが)、どれだけの国に流通しているか、興行収入、視聴率、DVD販売数、商品化権のロイヤリティなどによって判断することができるが、ご存じのように中国ではその種のデータが皆無に近いので実際どのような動きになっているのかさっぱりわからない(海賊版の数字でもわかれば別だろうが・・・)
その上、中国政府は日本のアニメに対して厳しい規制を課している(日本のアニメとは言ってないが)。元々日本映画の公開は許可されていないが、2005年からはテレビでも日本製アニメに対する放送規制が実施されるようになった。そして、それが今月には、従来夕方5時から夜8時までの3時間だった海外アニメ放映禁止枠が5時から9時まで拡大された。またDVDの発売も担当省庁の認可が必要であるが日本のアニメには許可が降りず、実質的な禁止状態となっている。
とは言え、クレヨンしんちゃんや、東映アニメーションの一部の作品など、正規に流通しているものもあることはある。しかし、海賊版率99%とも言われる現状では、それらの作品から上がってくる数字も全体の状況を推し量る手がかりとはならない。その意味で、本書は数量的なデータがなくても(知りようがないから仕方がないことであるが)、中国におけるアニメ受容の内情をビビッドに知ることができる画期的な本である。
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