『中国動漫新人類』に見る中国動漫事情⑨〜日本のアニメはダンピング?
手塚治虫によれば、1980年当時、アトムは既に世界41ヶ国でオンエアーされた実績があったとのことである。そんなアトムが中国で放映するきっかけとなったのは、国交回復と四人組追放のあとの解放ムードに乗って、日本サイドから中国に放映の企画を提案したためである。
ここで面白いのは、中国中央テレビが日本のスポンサーつきで提供して欲しいと言ってきたことである。社会主義国は国営放送しかないので原則スポンサーがつかないが、中国ではローカルテレビなどにはしばしばCFを入れていたらしい。当時最高権力者となっていた鄧小平の影響が既にあったのだろうか。
しかしながら、ここでよく考えてみると、中国におけるアトムの放映権料は結局日本企業の懐から出たものであり、形としては「持込」になるのではないか。今となっては、1本10万円という価格を誰がどのように決めたのかわからなくなってしまったが、これが果たして「対外ダンピング」を狙って考えられたものなのであろうか。
もちろん、このような経緯を現在の中国アニメ制作者達が知る由もないであろうが、その結果としての金額に対しては文化侵略のための「対外ダンピング」であるといっている。もし、本当にそうであるならば、手塚プロは深慮遠謀に富む大変な戦略家であろうが、1980年の段階でそんなことが果たして考えられていたかどうか。
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