第7回東京国際アニメフェア⑧〜マッドハウスがつくる『リロ&スティッチ』
前回書き忘れてしまったが、マッドハウス制作のテレビシリーズで見逃せないのが『リロ&スティッチ』であろう。ほとんど「合作」が見られなくなった現在、なぜディズニーのプロパティをマッドハウスが制作することになったのであろう。
かつて、日米一緒にアニメを制作する際の日本の役割はメイン・プロダクションが主で、プリプロとポスプロはアメリカで行なっていた。今の日本と韓国の関係に近いものがあるが、要するに下請けである。
しかし、アメリカでのアニメ制作費の下落などでここ数年そういった「合作」は激減したが、それには同時期にアメリカのアニメ産業界が3Dアニメへのシフトしたことの影響もあるだろう。日本で2Dアニメの制作を行っていたディズニー・プロダクションも2004年6月に閉鎖されてしまった(ディズニー・プロダクションが抜けたビルのフロアーに奇しくもマッドハウスが入居した)。
聞くところによれば、今回『リロ&スティッチ』のプリプロはマッドハウスが担当するようである。あのディズニーが自社プロパティのプリプロを外部に任せるとはにわかには信じがたいが、「スティッチのような人気キャラクターが登場する主要作品を日本で企画段階から制作することは前例がありません」とこ3/15付の朝日新聞でディズニー・ジャパンの社長に就任したポール・キャンランド氏が述べているから間違いないのであろう。実際、東京国際アニメフェアのディズニーブースで見た『リロ&スティッチ』のデモリールを見ると、氏が述べていたように沖縄が舞台になっていた。
もし、本当に今回ディズニーのプロパティをマッドハウスがプリプロ段階から行うのなら、日本のクリエイティブ力が認められたということである。これは、日米の共同制作の歴史から見てかなり画期的な出来事であり、このシリーズが成功すれば日米の関係は新しい段階に入るのは間違いないであろう。
しかしながら、気になることがひとつある。朝日新聞のポール・キャンランド氏のインタビューの『リロ&スティッチ』に言及する部分でマッドハウスの名前が一度も出てこないのである。これはどういう意味か。なぜ名前が出て来ないのであろうか。彼らはマッドハウスをパートナーと考えていないであろうか。
日本とアメリカとの共同制作で大変なのはオーソライズである。誰がどのようにオーソライズするか、それによって制作工程に大きな狂いが生じ多大なるロスが出る場合がある。もし、ディズニーが『リロ&スティッチ』のプリプロに対して本格的なオーソライズを行うのならかなり大変な作業になることが予測される。
マッドハウスはソニーピクチャーズとも共同制作を行うと伝えられている。その場合の関係性はどのようなものであろうか。ある種の懸念はある今回の共同制作であるが結果は10月のオンエアーを待つしかない。